受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

早稲田スピリットの下、
知的好奇心をかき立てる
発展的な学びを追究

早稲田大学高等学院中学部 学院長 武沢 護 先生

大学受験のない6年間のなかで
大切にしたい「純粋な学ぶ喜び」

先生写真
学院長 武沢 護 先生

髙宮 先生は公立校も経験されているので、早稲田の内部から見てわかる部分と、ほかの学校と比較してわかる部分があるかと思います。神奈川県の公立校から早大学院に来られたとき、どんなことを感じましたか。

武沢 神奈川県ではいろいろなタイプの学校を経験しました。最初はその地域のトップ校でしたが、進路の希望が多様な生徒がいる学校もありました。そういう学校の場合、大学受験という目標がない生徒たちが相手です。なかには数学が嫌いな子もいて、そうした子どもたちを放課後に残して数学の問題を解かせるわけです。

 すると、彼らは解けただけで喜ぶんですね。大学に進学するわけではないので、「こんなのが解けても意味がない」と考えそうなものですが、純粋に喜んで「先生、もう一問出して」と言います。一方、トップ校なら「この問題、本当に東大受験で出るの?」みたいな視点になりがちです。そういう生徒ばかりを見てきた後だったので、ある種のカルチャーショックを受けた記憶があります。

 学院にもいろいろな生徒がいます。モチベーションが高い生徒もいれば、必ずしもそうではない者もいます。そういう子には、純粋に数学のおもしろさや、本を読んだ感動を体験させたいと思います。文部科学省は「主体的な学び」と言いますが、ただ「主体的に学びなさい」といっても難しいことです。主体的に学べるかどうか、それは知的好奇心があるかないかだと思います。生徒一人ひとりの知的好奇心をどうやって育てるかが重要なのです。

広野 サピックスの低学年の授業で心がけているのは、「わくわくする授業」です。「解けた、うれしい」「次は何をやるの?」と、子どもは知的好奇心の固まりですから。

キャプションあり
上/約12万冊の蔵書のほか、雑誌・新聞を約70誌、DVD・CDなどの視聴覚資料を約3500点を所蔵する図書室
下/地上2階・地下1階建てのアリーナ(第二体育館)。スポーツ施設が充実しているのも魅力です

武沢 確かに「わくわくする」ことが大事ですね。知識が増えると、かえってそういうものがだんだんなくなってきます。

髙宮 知的好奇心を刺激する、わくわくする授業を行う。だからといって好きな科目だけをやればいいのではなく、幅広く学ぶことも大切にされていますね。

武沢 本校は大学予科がベースにありますから、文系・理系の区別なく「何でも学ぶ」という考え方です。文系でも数Ⅲを学びますし、理系でも古典を学びます。本校の卒業生が2人、大学の関東ラグビー対抗戦で活躍しました。早稲田大学のラグビー部というと、全国のラグビー強豪校から選手が集まり、本校の卒業生がレギュラーになるのは難しいのですが、スタメンになって活躍しました。2人とも中学部出身で、大学では政治経済学部なのです。そこがうれしいですね。わたしたちが育てた卒業生が政経に入って勉強もがんばって、かつラグビーも強豪校出身者とともにがんばっている。そういう姿が、わたしたちがめざす一つの目標ではないかという気がします。

髙宮 勉強もスポーツも一生懸命にやるということですね。先ほどグラウンドの前を通ったら、キャッチボールをしたり、サッカーをしたりと、みんな伸び伸びと体を動かしていました。敷地が広くて恵まれた環境だからこそですね。

武沢 中学部の登校時刻は8時30分にしています。高等学院より10分早くして、1時間目と2時間目の間の休み時間を20分とっています。その時間は、みんな外で遊んでいますよ。冬でも半袖でドッジボールをしています。これがいいんです。

髙宮 わたしは慶應義塾高校の出身ですが、全国レベルのいろいろな部があったなかで思うのは、自分は別のことをやっていても、周りにがんばっている生徒がいる環境が大事だということです。彼らがどれだけがんばっているか、けがをしてどれだけ悔しい思いをしているか、それがわかるんです。一人がたくさん〝引き出し〟を持つのも大事ですが、すべてを詰め込むのは無理があります。でも、クラスのなかに多様性があると、どこかでつながっていくような気がします。

21年7月号 さぴあインタビュー/全国版:
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