受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

「普く通ずる学び」を軸に
努力を重ねる日々が
未来に羽ばたく力を育む

慶應義塾普通部 部長 森上 和哲 先生

鍛えられる「書く力」
1万字近い毎週の理科のレポート

先生写真
部長 森上 和哲 先生

髙宮 森上先生はこの10月に普通部の部長に就任されました。そのときのあいさつ文を読ませていただきましたが、中学生の時期を「少年」ということばで表現されているのが印象に残りました。「自分はなぜここにいるか」「自分には何ができるか」といった大きな問いを立てるのが少年である、そして、その問いに答える手だてを探す場が普通部であり、また自分の力を発揮する方法を学ぶ場が普通部である、と書かれていますね。

森上 少年の時期は「もどかしさ」を感じるものです。「ぼくは天才だ、ぼくなら絶対できるはずだ、でもなぜできないのか」というもどかしさです。普通部にも自信家がたくさんいます。特に中学受験で入ってきた生徒はそうです。確かに、幼稚舎卒の生徒たちに比べて、ペーパーテストはできます。一方で幼稚舎からの進学者は、これまでレポートをたくさん書いてきたので、「書く力」にたけています。それを実感し、中学受験で入ってきた生徒はへこまされます。あるいは労作展でほかの生徒の作品を見て、「自分よりもすごい」と思うこともあります。そうやって、どこかで“敗北”を経験して、他人のすごさを知ると同時に、自分のこともわかってくるのです。たとえば、「自分は理科が好きだと思っていたけれど、勉強していないように見える彼にはいつも負けている」とか、「国語は苦手だと思っていたけれど、彼よりは点数が取れている。意外に向いているかも」などと気づくこともあります。いろいろな教科を学び、そのなかで向き不向きがわかってきます。みんなと一緒にいるから気づくわけです。学校はそういうことを感じる場所だと思います。

キャプションあり
上/本校舎の2階に展示された労作展の受賞作品。どれも中学生が作ったとは思えないほどの完成度です
下/理科室は4室あり、毎週2時限連続の実験が行われています

髙宮 幼稚舎からの進学者は書く力があるとのことですが、普通部の授業は書かせる機会が多いので、確かに最初は力の差を感じるかもしれませんね。特に理科のレポートに苦労したことはわたしもよく覚えています。理科に限らず、「書いて思考力を磨く」ことを、今の教育改革でうたわれる前から連綿と続けていますね。

森上 国語でも作文が多いですし、書くことはどの教科においても重視しています。理科のレポートは、初めは苦労しますが、卒業生に聞くと「あれがあったから大学の卒業論文も楽だった」と口をそろえて言いますね。

広野 レポートはどのようなものを書くのでしょうか。

森上 理科は基本的に毎週、2時限連続で100分の実験をします。1分野と2分野に分かれていて、理科1の実験の翌週に理科2の実験があり、そのときまでに前週に行った理科1のレポートを提出します。理科2も同じです。900字詰めの専用のレポート用紙を使って、5~10枚、多い生徒は20枚ほど書きます。これが毎週あるので、みんな、ひいひい言います。とはいえ、最初は実験内容と結果を書くだけですから、どれもあまり変わりはありません。少し進むと、なぜそういう結果になったかを考察しなくてはならないので、友だちとディスカッションしたり、図書室で一緒に調べたりしながら書いていきます。

23年1月号 さぴあインタビュー/全国版:
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