受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

最新中学入試情報

2023年度中学受験  サピックス小学部第29期生/親子で歩んだ 受験の軌跡

進学校 浅野中学校

中学受験で手に入れた宝物

N.Kさん お子さんの名前 Yくん

 2月4日、芝中学の受験結果を見届け、息子の中学受験生活は幕を閉じた。あれほどまでに熱望した栄光学園中、麻布中からの合格を勝ち取ることはできなかった。しかし彼は、別のもっと大切な宝物を得ることができた、そんな中学受験だった。
 思えば、息子のサピックス生活は思い描いていたものとはほど遠いものであった。5年生の前半までは最上位クラスゾーンをキープしていたのだが、5年生の夏休みを機に一変することになる。算数の成績が急降下し、いくら学習量を増やしても立て直すことができない。クラスもそれまで常住していた上位クラスから中位クラスが指定席となってしまい、6年生のゴールデンウィーク前には、ついに算数の偏差値が30台にまで落ち込んでしまう。
 しかし、そこであきらめることはなかった。5年生時のテキストを一から繰り返しやり直した。質問教室にも通い詰めた。同じ問題を繰り返し質問することもたびたびだった。この弱点に向き合い続けた6年生の夏休みまでの数か月は、息子のサピックス生活のなかでも最も苦しい時期だったと思う。そして秋以降、なんとか算数の成績も足を引っ張らない程度にまで回復。栄光学園、麻布の算数は50%程度の得点率を目標とし、それ以外の3科目で合格点を稼ぐ戦略を立て、直前期にはある程度の手応えを感じ取ることができた。弱点から逃げずに、正面から向き合い続けることで、遠くにかすんでいた熱望校に手が届くところまでたどり着いたのである。
 そして、運命の2月3日。あれほど熱望していた栄光学園は不合格となり、その1時間後、麻布の合格発表掲示板にみずからの受験番号がないことを確認した息子は、文字どおり泣き崩れた。「なんとかならないの?」と嗚咽する息子を前に、掛けることばが見つからない。息子にこんな苦しい思いをさせてしまったことに対して後悔の念を抱くとともに、この精神状態では4日や5日の受験は難しいと思った。そんな苦しい状況から息子を救い出すため、この時点で撤退することも考え始めていた。
 しかし、そこにいたのは、いつも親の陰に隠れ、どこに行くにも手を引いてあげていた幼い息子の姿ではなかった。彼はみずからつないだ手を離し、みずからの足で立ち上がり、消え入りそうな声で「大丈夫だから」とみずからを励まし、そしてみずからの力で芝中の合格を勝ち取った。彼はこの厳しい中学受験生活を通じ、いつの間にかみずからの力で自分の人生を切り開く強い心を身につけていたのである。ここまでがんばってきたことは、けっして無駄ではなかったと心から思う。
 最後になりますが、中学受験初体験の親子を共に導いてくださったサピックスの先生方、並びに職員の皆さまに心から感謝いたします。来年以降も、この厳しい中学受験の世界を泳ぐ子どもたちを導いてくださるよう、お願い申し上げます。

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