受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

最新中学入試情報

2023年度中学受験  サピックス小学部第29期生/親子で歩んだ 受験の軌跡

進学校 慶應義塾普通部

一生忘れられない光景

S.Tさん お子さんの名前 Yくん

 2月2日午後7時、私は息子の合格発表を見るために慶應普通部の門の前にいた。寒々とした暗闇のなか、大勢の親や子が門の前で待っていた。合格番号が張り出された掲示板が、遠く先にライトアップされていているのが見えた。私は胸の高鳴りを抑えるため、何度も深呼吸をした。ついにこの日が来た。
 息子は2年生からサピックスに通い始めたが、当初から慶應が第一志望だった。理由は、フェンシング部がある学校に行きたかったからである。息子は幼稚園の年長のときに見た、リオデジャネイロオリンピックのフェンシング競技にひかれ、1年生からフェンシングを始めるようになった。熱血コーチとの出会いもあり、息子はみるみる強くなっていった。フェンシングにかける時間も多くなっていったが、私は慶應が難関校であることは重々承知していたので、勉強面では手を抜くことがないよう、厳しく息子を指導した。いつしか妻はフェンシング担当、私は勉強担当というような役割分担ができていた。
 息子との受験勉強で意識したことは、塾に任せっ切りにするのではなく、私も主体的に息子の勉強に関わることであった。私は田舎で育ったので中学受験の経験はなかったが、高校受験、大学受験とひと通りの受験をしてきたので、それなりの受験ノウハウというものは持っていた。毎回の授業の復習、模試の復習をこなすとともに、4年生までは自分も、毎回の模試の問題を全教科、時間を計って解き、息子の点数と比べて一喜一憂していた。
 5年生からは算数と理科が難しくて教えられなくなったが、国語と社会は継続した。おかげで5年生から6年生前半にかけて、成績は安定していた。息子はフェンシングを週3回はやりつつも、限られた時間で私との勉強もがんばって続けていた。
 6年生になると、通塾の時間も教材の量も明らかに多くなり、「これをあと1年続けるのか」と思っていた矢先、息子の四つ上の先輩でフェンシング17歳以下のランキングで1位のT君が、なんと慶應義塾高校に入学したのである。息子のモチベーションが上がらないわけがない。息子は、あこがれのT君と一緒に練習したいという強い思いを持ち続け、厳しい受験勉強に耐えた。
 6年生の秋から冬にかけて、これまで安定していた成績が大きく変動したときがあったが、そのころからは私の仕事も落ち着き、家族が一丸となって最後の追い込みを行った。そして…。
 慶應普通部の係員が門を開け、一歩ずつ掲示板に近づいていく。息子を信じていたものの、これまで受験の厳しさを痛いほど経験してきた私の脳裏には、いろいろな思いが駆け巡っていた。掲示板の下に着いた。勇気を持って見上げると…、そこに息子の受験番号を見つけた。その瞬間、涙が頰を伝わった。心のなかで「よくがんばったね」と何度もつぶやいた。フェンシングとの両立(息子は6年生の大きな大会で優勝した)、日々の塾での勉強、私の厳しい指導に、幼い10歳前後の息子はよく耐え、ついに栄冠を勝ち取った。わが息子ながら本当に誇らしく思った。
 最後になりますが、サピックスのすべての先生方、特に息子が苦手だった国語を最後まで辛抱強く指導してくださったお二人の先生に、心より感謝の気持ちを伝えたいと思います。

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