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「世の中は全部サピ」
Y.Hさん ●お子さんの名前 Tくん
「結局、世の中は全部サピ」
入室してからの3年半、このことばをいったい何度家庭内で交わしたことか。バースデーケーキのロウソクを吹き消さずに観察したし、時計を見ると角度を求めたくなった。テキストの出典元の本を図書館で見つけてうれしくなったり、第一志望校の過去問のリード文に出てきた製品をスーパーで見つけて思わず購入したりした。まだまだ多くのことが思い出される。それは、息子と学びを共有していたからにほかならない。
わが家での家庭学習において、私が国語と社会をサポートし、夫が理科をサポート。息子が最も苦手とする算数は、2人でサポートすることになった。サポートを担うといっても、中学受験をしていない私にとっては見たこともない内容ばかりだったので、テキストを手に取り、まさにサピックス生になったつもりで学ぶこととなった。
サポートとして、たとえば国語では、息子の視点だけでは物語の解釈が不十分なとき、大人の視点や異性としての視点を伝えることで理解を深めてもらった(小6男児にとって恋愛感情や女子の集団心理は意味不明のようで)。たとえば算数では、先にも述べたように中学受験を経験していない私は、植木算もつるかめ算も初対面だったものの、基礎問題は解けるようになった。むしろ基礎問題しか解けないことで、理解の穴を息子がいくつも抱えていることに気づけた。基礎を固めなければ応用も発展も揺らぐということを声を大にして伝えたい。このように、息子と学びを共有することで〝サピックスに立ち向かい、受験に挑もうとしているのは自分だけでないよ。家族で支えるよ〟という秘めたメッセージを伝えたかった。私に時間的余裕があるからこそできたサポートではあったが、応援する気持ちをしっかり伝えることは受験生の親には欠かせないことだと実感している。
親子間で学びを共有すると同時に、夫婦間では方向性を共有していた。特に、テスト結果を受けて「ほめるor 活を入れる」という点に気をつけた。一方には「よくできた」とほめられ、他方にはミスを責められては子どもが困惑してしまう。評価すべき箇所と次に向けて克服すべき箇所はどこなのか、互いに考えを出し合ってから息子と相対するようにしていた。それだけでなく、どんな学校が息子に合うのか? どんな人生を歩んでもらいたいか? 入試本番をどう迎えるか? 中学受験の方向性が違わぬよう、折に触れて確認していた。本音を言うとサピックスに通わせた以上、「少しでも偏差値の高い学校で合格を」と思ったこともあるが、「受験がゴールではなく人生の糧であれ」と思えるまま、幕を閉じることができた。
中学受験は親子でする最後の共同作業といわれている。親子で濃い時間を過ごせたうえに、世の中すべてのものが学びの対象であると示してくれたサピックスには感謝するばかりだ。
2023年度中学入試 受験体験記 |
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