受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

最新中学入試情報

2023年度中学受験  サピックス小学部第29期生/親子で歩んだ 受験の軌跡

進学校 慶應義塾中等部

地獄から天国

T.Nさん お子さんの名前 Hくん

 2月2日(木)午後7時すぎ、慶應普通部の発表へ。併願2校と当日の攻玉社中の合格を確認し、連勝。いける、大丈夫。深呼吸をして、番号を探す…。「ない」。掲示板を何度も見返す。残酷なことに、補欠に息子の前後の番号を見つける。「自分の番号だけない、落ちた…」。駅への道すがらサピックスに連絡すると、息子は先生と話しながら泣いている。その横を、封筒を手に意気揚々と通り過ぎる笑顔の親子。われわれだけ灰色の世界に隔離された気分。現実を受け止められない。その晩、先生に掛けてもらった「今は思いきり悔しがっていいよ。ただ、慶應は二つあるよ」。このことばを胸に12時間後、慶應中等部の一次試験へと向かう。
 2月3日(金)朝、さすがに前日のショックが深く、テンションが上がらない。倍率だと中等部のほうが上。厳しいかな。その後、立て続けに2月4日と5日の学校の追加受験も検討し、休む暇がない。慶應へのあこがれが強いため、高校受験も一瞬頭をよぎる。
 2月4日(土)午後3時。一次試験の発表。息子がサイトで確認。「よっしゃー!」と叫ぶその声で合格を知る。でも、まだ二次がある。急ぎ翌日の実技・面接の準備に移る。長かった受験も明日で終わる。親子3人で、なぜ慶應中等部で学びたいのか? 家庭で大事にしていることは? 面接がなければそれほど深く考えることもなかった問いへの答えを考える。
 2月5日(日)、二次試験終了。親のほうが緊張した。うまく答えられなかった妻が責任を感じて号泣。「息子の人生を私が台無しにしたかも」。普通部のトラウマも抜けておらず、一気に暗雲が立ち込める。でも、そのとき息子が放ったひと言。「ママ、まだ結果出てないよ」に息子の成長を感じる。
 2月6日(月)、息子は小学校に戻り、前日までの受験がうそのように、普通の6年生に戻る。午後1時、ほとんどあきらめていた妻が合否確認。「…うそっ、ある。合格してる!!」。あきらめかけていた慶應への夢が一気に現実となる。地獄も天国も経験した濃密な時間だった。結局、息子の受験は2月6日までかかり、計6校を受験。人生でいちばんの挫折と成功を体験した。

 4・5年生のときは、クラスも真ん中前後で受験と向き合うこともできず、「サピックスをやめたい」と言ったのも一度や二度ではありません。そのたびに、一緒に通う友人に助けてもらいました。その後、6年生になると「心・技・体」を意識し、試験に臨んでいきました。
 まず心。毎日、ノートに「慶應合格」と書き出して目標を再確認。天井に貼った志望校の写真を見て寝ました。次に技。1月10日の栄東中、1月20日の市川中と一定間隔で入試を経験し、緊張感を維持するようにしました。また、ゲームと音楽はリフレッシュに活用しました。最後に体。受験も体力が必要です。サピックスからの帰路は、友人と片道1・7キロメートルの道を走りました。また、毎日の勉強時間を書き出し、塾での時間の10分の1、自宅学習の時間の3分の1は自由時間とし、自由時間貯金をためていきました。
 一度は地獄を味わったわが家の受験ですが、最高の結末となりました。

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