２月５日、私は父と時計の秒針をにらんでいた。
　父がカウントダウンを始める。
　慶應湘南藤沢中（ＳＦＣ）の結果が出るのは午後１時。残り10秒だ。
　私の心は、ほかの学校の合格発表のときよりも落ち着いていた。
　なぜなら、ＳＦＣは私にとって高嶺の花のような存在だったからだ。土曜志望校別特訓はＳＦＣコースに入っていたが、毎年、合格者数はけっして多くはない。そんななかで自分が合格できるとは信じ切れていなかったのだ。
　そんなわけで、結果が知りたくてうずうずする気持ちと、あきらめの気持ちが入り交じっていた。
　父が「ゼロ」と言う代わりに画面をタッチする。
　私は心のなかで「ミツル」と言いながら、目を通していった。
　「ミツル」とは私の受験番号のことだ。
　オンライン上の合格者掲示板の中から自分の受験番号を見つけ出したとき、まず思ったのは「見間違いじゃないか」ということ、そして驚き。６倍以上の競争率のなか、自分が合格に行き着いたとは信じられなかった。そして、いちばん最後に遅れてやってきたのが喜びだった。これまでの３年間が報われた思いだった。
　４年生からの３年間、問題が解けずに泣いたり、成績が急降下して落ち込んだりしたこともあったが、塾の先生方や両親、友人たちの支えもあり、ここまでたどり着くことができた。
　最後に、授業でおもしろい解説をして、勉強の楽しさを教えてくださった先生方へ。最後まで私のことを信じ続けてくれて、ありがとうございました。