受験ライフをサポートする進学情報誌 さぴあ

2026年度中学入試 親子で歩んだ 受験の軌跡

進学校 慶應義塾普通部

マイペースに駆け抜けた濃密な3年間

 中学受験を終え、今感じるのは、結果以上に「この3年間が家族にとってかけがえのない時間だった」という深い充足感、そして少しの寂しさです。

 小さい頃から読書が大好きで、思考を巡らせるタイプであった息子は、中学受験に向いているのではと思い、新4年生から入室しました。しかし、現実は甘くありませんでした。筆算は書かない、字は本人すら読めない状態でしたが、自分が納得しないとスタイルを変えません。そこで考えたのは、彼の好きなもので学ぶことです。漢字練習には彼が喜びそうな例文を使い、YouTubeで歴史や地理を学ぶ。塾での学習単元に合わせてマンガや本も用意しました。彼の好きなことの延長線上に学びを置く工夫を日々続けました。

 上位クラスにも入ることができ、割と良いペースで進んでいたのですが、5年生の夏明け頃から雲行きが怪しくなり、11月の新6年生のSOでは偏差値40台、合格可能性20%のオンパレード。撤退も頭をよぎりました。今思えば、彼のモチベーションが下がり、試験中にどこか「心ここに在らず」という状態だったんだと思います。悩みましたが、ある先生から「算数は頭でわかっているけど、手を動かさないから解けていないだけ。論理的に考える力は十分ある」と、彼の本質を突いた言葉をいただいたことが、親としての救いでした。偏差値という数字の裏側にある、彼らしさを理解してもらえていることに安堵したのだと思います。

 6年生のSS特訓が始まると、状況はまた変わりました。慶應普通部コースで馬の合う仲間に囲まれ、連帯感が彼の背中を強く押してくれました。ただ、ハードな日々の疲れが出たのか11月に高熱が1週間以上続き、学校別SOの2回目は受けられませんでした。しかし、当の本人は至って飄々としたもの。家では私の膝に寝転がってくる甘えん坊な一面を見せつつも、メンタルの強さは驚くほどでした。年明け、体調管理に気を揉む親をよそに、直前の数日を除いて休まずに学校に通っている姿を見て、この子ならきっと大丈夫、と思えました。

 最終的に、4回の合格力判定SOを経て偏差値は志望校の合格ラインまで緩やかに、かつ確実に右肩上がりを続けました。夫婦で話し合い、併願プランを立てるうえで大切にしたのは、セーフティーネットを張りすぎないこと。合格も不合格も、すべてを糧にする覚悟で臨みました。結果を家族全員で受け入れるプロセスこそが、彼の人生にとっての財産になると信じていたからです。

 共通の目的を持ち、共に走り抜けたこの3年間は、何度も挫折しそうになったけれど、本当に楽しかった。サピックスの先生方、職員の皆様、そして切磋琢磨した友人たち、応援してくれた学校の先生や友人たち、戦友の夫に心から感謝いたします。