受験ライフをサポートする進学情報誌 さぴあ

2026年度中学入試 親子で歩んだ 受験の軌跡

進学校 慶應義塾中等部

人間らしい鍛錬の場であった中学受験の十年に感謝

 AI時代がきた。しかし中学受験は、ますます作業の高速化と、暗記の大容量化を求めているようだ。これがこの国の人材選抜の特徴の一つであることは言を俟たない。だが四十年前と変わらないことも多い。

 転校生の心情と空の色は共に変化する、慶太君はK町とO町を往復、溶け残った白い物体は熱しても変化しない。河口付近には泥がたまり、辺の比が1:2の直角三角形が見つかれば勝利目前、それは金科玉条と書くのであって金貨極上ではない…半世紀にわたり、新入社員も部長も、同じ問題を解いていないか?

 「新入社員ではなく、新しいAIを採用しよう」

 「マネジメントは、AIに任せよう」

 そんな世情である。この受験様式はいつまでも続かないのではないか。

 「AI時代の子どもたちが本当に磨くべきものは、記憶ではなく感情、作業ではなく議論なのではないか…」

 スマホの画面に桜咲く。家族が歓声を上げる中、私はそんな妄想をしていた。

 三男の受験が終わった。兄弟三人はみな小学三年生からサピックスでお世話になった。足掛け十年に及んだ中学受験伴走生活である。それがついに完結した。

 前述のとおり、選抜方式が変化する可能性はあるだろう。しかしそれでも、私は中学受験という活動を推す。夏の甲子園のように、変わってほしくない。なぜならば、まず中学受験は、他のどのようなスポーツや文化的活動よりも公平であるからだ。全ての小学生選手が、意思さえあれば、全国規模の試合に参加できる。連盟もないし、保護者審判講習もない。そんな世界は、中学受験のほかにはない。次に、勝率である。当家の息子は三人ともこの界隈では名の知れた中学に進学したが、その競争率はせいぜい四~五倍。時間と労力を投下するリターンとして、果てしないトーナメント戦を勝ち抜くよりも妙味がある。勝てなければ、気持ちも育たない。努力と成果の相関を経験できることは別の道でも役に立つ。そして最後に、最高の鍛錬を成立させるための重要な要素である「良き師、良き友、良き自己研鑽」、この三つを中学受験では揃えることが出来る。その体得は、今後の人生に大きな意味を持つだろう。最初の二つはサピックスで手に入る。最後の一つを支えるのは家庭の文化だ。すなわち、スケジュール管理に始まり、○つけ、付箋貼り、時には一緒に解いてみる。いわば伴奏的伴走活動である。こうした日々の取り組みが、家庭に規律を生み、楽しい会話を増やしてきた。

 小学生時代は、あっという間に過ぎ去っていく。私たちの子どもが可愛かったころの面影は、もう戻ってこない。その変化と成長を身近でみることのできる受験伴走という活動は、サピックスの講師陣、教材、また教室の仲間のおかげで満足のいくものであった。中学受験の姿が変わろうとも、子どもたちが大人へ駆け上がっていくプラットフォームとして、サピックスが今後ますます発展することをお祈りしています。