受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

確固たる価値観と
グローバルな視点を持って、
行動を起こせる人間を育てる

サレジオ学院中学校・高等学校 校長 鳥越 政晴 先生

コロナ禍の不自由ななかでも
工夫すれば「解」が見つかる

山口 実際に、奉仕の心を育むためのボランティア活動も積極的に行われていますね。東日本大震災のときも、生徒たちが被災地に支援に行ったと伺いました。今は新型コロナの影響で思うように動けなくなりましたが、昨年も大きな水害があり、現地に支援に行きたいと思った生徒もいたのではないですか。子どもたちがやりたいことを許可できない状況かと思いますが、生徒の情熱をどう鎮めていらっしゃるのでしょうか。

先生写真
校長 鳥越 政晴 先生

鳥越 「緊急事態宣言が出されるような状況だから無理なんだよ」と言うと、最終的に生徒たちも納得はします。しかし、彼らは投げません。「一緒に考えていこう」という余地を残すと、いろいろな案を考えてきます。彼らのもやもやした気持ちに寄り添いながら歩いていくと、帰着点が見えてきます。そんなことが昨年もいろいろな局面でありました。サレジオ祭(文化祭)にしても、結果的には良い思い出を作って終わることができましたが、その途上では、泣いたり、先生と言い合いになったりするなど、いろいろありました。でも不自由な、正解がないなかでいろいろ考えていくと、納得できる「解」が出てきます。その背景には教員と生徒の間の信頼関係があり、「アシステンツァ」があったのだと思います。

神田 昨年のサレジオ祭は、オンラインで行われたそうですね。

鳥越 オンラインとオンデマンドを交えながら、一部はライブでも行いました。「コンテンツを配信するだけではつまらない、どれだけライブ感を出せるかが勝負だ」ということで苦労しました。直前に、著作権の関係で流せなくなったコンテンツがいくつかありましたが、それも勉強です。ただ、最後のサレジオ祭への参加となる高2生は、バンド演奏が著作権の関係で配信できなくなったので、それだけはライブでやらせてほしいと交渉してきました。その結果、高2だけは特別に許可して、2時間限定のコンサートを行いました。不自由ななかでも、やれる方法を見つけて実践することができたので、彼らは満足したようです。

聞き手2
サピックス小学部
教務部
山口 拓司

神田 ICT機器の操作に加え、交渉術やプレゼン力なども駆使して、大きく成長した部分があったのでしょうね。

山口 クリスマスの際には、募金活動をされるそうですね。昨年は生徒がフェアトレードでコーヒー販売を行って、寄付されたと伺いました。

鳥越 カトリック研究会の生徒たちが「フェアトレードをやりたい」と言ってきたので、講師の方をお呼びして勉強して、アフリカ産のコーヒーを売ることを考えました。生産者の方々が正当な対価を受け取り、生活改善と自立をめざすことを目的としたフェアトレードの精神は、クリスマスの意味にも通じるものです。通信販売の形で保護者にも販売しましたが、大盛況でした。南スーダンの若者への学費援助のための街頭募金も、毎年行っています。コロナ禍なので大きな声を出さないようにしましたが、「誰かに声を出すなと注意されたら、謝ってすぐ退散しなさい、議論はしないように」と伝えました。

神田 校長先生の「朝の話」が学院のホームページで紹介されていますが、「これこそがクリスマスを祝う精神なんだよ」と生徒の活動をたたえていらっしゃいますね。感動しました。生徒たちはいつもそういうお話を聞いているからこそ、フェアトレードでも街頭募金でも、すぐ行動に移せるのだなと思いました。

鳥越 一度の話で生徒が急に変わるわけではありませんから、地道に〝種〟をまくしかないと思ってやっています。

21年5月号 さぴあインタビュー/全国版:
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