受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/関西情報

自由な校風を守り続け
盛んな行事やクラブ活動で
個性あふれる人物を育む

東大寺学園中・高等学校 校長 森 宏志 先生

長距離走大会やスキー研修など
たくましさを育む多様な学校行事

キャプションあり
上/‌食堂と多目的ホールを兼ねる雑華ホール。日替わり丼や上弁当が人気です
中/‌休み時間など生徒たちの憩いの場となるサンガティ・スクエア(中庭)
下/‌全天候型で人工芝を敷設した第二グラウンド。テニスコートとして使われるほか、バスケットボール、ハンドボール、陸上競技などにも使用します

髙宮 昨年は学校行事にも大きな影響が出ているのではないでしょうか。

 2016年から、高2の希望者を対象として、夏休みにイギリスのオックスフォード大学への短期留学を実施しています。人気行事として定着していたのですが、昨年は実施できませんでした。今年の高2生も、昨年のうちに行う予定だった、外国人のスタッフを招いての事前研修が実施できなかったため、すでに中止が決まっています。この短期留学は11日間の日程で、現地の学生と毎日のようにディスカッションを行うことが中心で、まったく観光はしないというスケジュールです。受け入れの関係で定員は30名ですが、例年多くの希望者が集まるため、この春に卒業した学年では、さらに30名をイングランド南部にあるブライトン大学でも受け入れてもらいました。

髙宮 生徒たちが海外に出て異文化と触れ合う行事には、どんなことを期待されているのですか。

 ひと言でいうと、「井の中の蛙にならない」ことです。現地に行くと、自分たちと、少し年上のオックスフォードの学生たちとでは、あまりにも違うということを知るでしょう。彼らは視野が広く、一つのことをディスカッションするにも知識量がとても豊富です。それは、リベラルアーツの素養があるからでしょう。そうしたことに仰天するという強烈な体験をして帰ってきたとき、生徒たちの雰囲気は変化します。

中嶋 そのほかに特徴的な学校行事にはどんなものがありますか。

 中学の修学旅行は行き先を教員が決めますが、高校の修学旅行は、行き先を生徒たちの投票で決めるのが恒例です。費用や泊数などが条件に合えば、行き先は自由ですから、海外へも行っていたのですが、昨年は、行き先を北海道から九州に変更し、泊数もこれまでより2泊減らし、3泊4日で実施しました。今年は7月に北海道旅行を4泊5日で予定していますが、実施できるかどうかは、今後の状況次第ですね。

 また、中1は、3年前から、10月に2泊3日で宿泊研修を実施していますが、これも昨年は実施できませんでした。中2では、「研修旅行」と呼んでいる修学旅行があります。近年では2泊3日で沖縄に行くことが多いですが、高知県安芸郡の馬路村で山村体験をした学年もあります。この研修旅行も、昨年から延期を繰り返し、今年行く予定にしていましたが、それも実施は難しく、再延長の可能性もあります。そのほかに中学生の行事では、校内で10月に中学体育大会、11月に中高の学年単位の球技大会、1月に中学の百人一首大会、2月に中学長距離走大会などがあります。この長距離走大会は、中3にもなると16キロを走るという本格的なものです。

 さらに、中3の志賀高原スキー研修、高1の夏山登山(槍ヶ岳)という、希望者を対象とした行事もあります。現在の高1はこのスキー研修ができなかったので、次のシーズンにずらして実施するかどうかを検討しています。例年7月に実施している高1の夏山登山も様子を見ているところです。

髙宮 先日、法政大学の総長である廣瀬克哉先生とお話しする機会があり、貴校の卒業生であることを知りました。そこで、貴校での思い出を伺ったところ、春に東大寺で行われる聖武天皇祭のお話が出ました。

 5月の聖武天皇の命日に、ふだんは開放されていない東大寺境内の天皇殿での法要行事ですね。毎年、中1生および高校から入学した高1生が参拝しています。また、その日は僧侶たちが昔の歴史風俗を装った時代行列を行うので、本校の高2生から希望者を募り、装束を身に着けて行列に加わります。これが大変な人気で、毎年、多くの希望者が集まります。このように、東大寺の大きな行事がある際には、本校の生徒たちがそのお手伝いをしているのです。お水取りの行事でも、毎年、本校の高3生の希望者が大きな松明の根元を支える役などとして参加させてもらっています。本校は宗教色を前面に出す学校ではありませんし、東大寺の僧侶の方々も学校運営に対して口を出すことはありません。ですから、こうした行事に参加するのは、その宗教的な雰囲気から生徒に何か感じるものがあればいいという思いで参加者を募っているのです。

21年7月号 さぴあインタビュー/関西情報:
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