受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

専門性が高い教員による授業と
実体験で「知的基礎体力」を養い
みずから未来を切り開く力を育む

東京学芸大学附属世田谷中学校 校長 福本 みちよ 先生

後輩への思い、教員への感謝
コロナ禍での行事で大きく成長

キャプションあり
上/広々とした土のグラウンド。運動会もここで行われます
下/四季折々の植物が見られる中庭は、生徒の憩いの場です

神田 「生活学習」は、「道徳」と「特別活動」を統合して「生きる力」を育むというものですね。具体的には、学級活動や生徒会活動、学校行事などが重要になってくると思いますが、学校行事は基本的に生徒主体で進めているということですね。

福本 教員もサポートには入りますが、基本は生徒主体です。わたしからすると「そんなことまで生徒にやらせて大丈夫なの?」と思ってしまいますが、教員たちは忍耐しながら見守っています。大事なのは生徒たちが「それならどうする?」とみんなで話し合って決めて、まずはやってみること。教員はぎりぎりのところまで我慢して、だめだと思ったら手を差し伸べます。そういうことは行事だけでなく、学校生活のさまざまな場面で行われています。

神田 昨年の運動会は新型コロナの影響で延期になり、結局は台風の接近で中止せざるを得ませんでしたが、学校の伝統を伝えるために、3年生が練習してきた応援のダンスだけは、別日を設けて披露することができたそうですね。

福本 運動会の開催は無理だとなったとき、「せめてダンスだけは」と急きょ実現しました。上級生は自分たちがつくってきた大切なものを後輩に伝えたいという思いが強いですね。特に、この2年間は新型コロナの影響で伝えられないことが多く、校歌にしても、1年生から3年生までが全員で歌えたのは1度だけです。ですから、校歌をどう後輩たちに伝えていくかも、3年生たちは考えていました。主体的にいろいろなことに取り組んでいるからこそ、後輩に伝えたいという思いが強いのだと思います。

神田 情報委員の生徒たちが書いている「ふかさわだより」を読ませていただきました。行事への思いが伝わってきて、感動しました。おっしゃるとおり、「運動会に対する3年生の熱い思いが少しでも下級生に伝わっていたらうれしい」と書かれていました。また、さまざまな行事が中止・延期となるなか、「最後まで練習をして、予行演習にたどり着けたということに感謝している」ともありました。生徒たちは先生方の思いをしっかり受け止めていますね。

福本 この2年間、行事が制限されるなか、完全な形ではできなかったけれど「これはできた」「これはやらせてもらえた、ありがたい」ということばは、いろいろな場面で聞きます。そういう経験を通して、生徒と教員の距離が近づいていくのだと思います。主体性を大事にして「やらせてみる」という校風があって、そのなかで自ずと生徒と教員の信頼関係がつくられていくのが本校の姿です。卒業生がよく顔を出してくれますが、みんな同じようなことを言うのは、その伝統が続いているからだと思います。

22年4月 さぴあインタビュー/全国版:
目次|4|

ページトップ このページTopへ