受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

チャレンジする意欲を伸ばす
開かれた教育環境が
未来を創る力を育てる

渋谷教育学園渋谷中学高等学校 校長 高際 伊都子 先生

将来のために必要なら国外へ
広がる「海外大学」という選択肢

神田 毎年、海外のトップレベルの大学に多くの卒業生が進学されています。今年はサンフランシスコに本部を置くミネルバ大学に進んだ卒業生もいます。ミネルバ大学といえば、講義はすべてオンラインの少人数ゼミで、学生は世界七つのキャンパスを巡りながら学ぶという、新しい教育を行っています。合格率1~2%ともいわれる難関を突破したのはすばらしいことです。

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高際 1期生からすでに、海外大学への進学者が出ています。最初のころは、スタンフォード大学やハーバード大学の話をしても、出てくる質問は「偏差値いくつですか?」というものばかりでしたから、時代が変わったと思います。「自分はこの先、何をしたいか」ときちんと考えて選ぶようになりました。社会が変わってきたのですね。学校としても、変わりゆく社会に出ていく子どもたちを預かっているので、そこはとても気をつけています。

 ミネルバ大学を選ぶ生徒が出てきたのは、そのような学びの環境について、子どもたちが関心を持つようになったということでしょう。それから、今年はヨーロッパ志向が目立ちました。それもオックスフォードやケンブリッジではなく、「農学を学びたいからオランダの大学に行きたい」という生徒もいました。確かに、オランダの大学は農学部ランキングで上位です。子どもたちの世界は広がっていて、ヨーロッパでも中南米でもアジアやアフリカでも、さまざまな国に目を向けることが大事であることが伝わってきたのだと思います。

堀口 海外の大学で実際に学んでいる先輩がたくさんいることは、後輩にも大きな励みになると思います。当然、フィードバックしてくれるでしょうから、情報も蓄積していきますね。

高際 いろいろな生徒がいて、本当におもしろいです。今年は『フォーブス・ジャパン』の「世界を変える30歳未満の30人」に、本校の卒業生と幕張の生徒が選出されました。本校の卒業生は在学中から「宇宙飛行士になりたい」と言っていた女子で、東北大学工学部に進学し、同大学大学院から宇宙航空研究開発機構(JAXA)に入り、現在はパリ天文台で研究員を務めています。実は今、日本で募集している宇宙飛行士の最後の250人に残っていて、発表を待っているところです。

神田 それは楽しみですね。すばらしいチャレンジ精神です。

高際 本校はグローバル教育で注目されますが、彼女にしても、ミネルバ大学に進学した卒業生にしても、英語力が飛び抜けて優れていたわけではありません。英語は母語ではありませんから、後で勉強してできるようになればいいのです。英語を学ぶ前に、英語で何を言いたいか、きちんと自分のなかに蓄積しておくことが大切です。伝えたい内容を自分自身のなかに持つことは、中高時代に友だちとしっかり交わることで見えてきます。

堀口 中学入試についてですが、入試問題の出題傾向として、先生方が意識されていることがあればぜひ伺えればと思います。

高際 先ほどのインプットとアウトプットの話のように、4技能のバランスを取るという点では比較的リード文が長いと思います。文章をきちんと読ませて、そこから答えを導き出させるようになっています。また、世の中の動きに興味・関心を持ってほしいので、身の回りのことから社会の課題を問うような問題が多いですね。物事を多面的に見る力は大事です。成果ばかりを追わず、「いろいろ考えようね」というメッセージを込めています。

堀口 わたしは算数担当ですが、算数では式を書かせる大問が最後にあります。答えを書くヒントのようなものがあれば、受験生のために教えていただけますか。

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高際 基本的には段階を踏んで解いていく問題が多いので、その途中で条件を使えば、キーとなる数のようなものが出てくるはずです。それをきちんとわかるように書いてほしいですね。自分が考えたこと、こんなところまで自分はわかったのだ、ということをアピールしてください。

神田 では最後に、受験生と保護者の方にメッセージをいただきたいと思います。

高際 保護者の方は、「がんばっているのに、なかなかできるようにならない」と思うことがあるかもしれません。でもそれは、次に上がるためにがんばって「力をためている状態」です。あるところに来ればきちんと上がりますので、待ってあげてほしいですね。ステップの上がり方はさまざまですし、その子なりにがんばっていることを評価して、中学受験に臨んでいただきたいと思います。努力を続けた経験は、結果によって否定されるものではありません。人生において、がんばることができたというその経験を、保護者の方とお子さんが共有できればいいと、いつも思っています。

神田 おっしゃるとおりです。子どもたちの力はぎりぎりまで伸びますから、待ってあげることが大切ですね。本日はありがとうございました。

22年12月号 さぴあインタビュー/全国版:
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