受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

多様性を感じられる教育環境で
「共立」の精神を反映させた
21世紀型リーダーシップを育成

共立女子中学高等学校 校長 前田 好子 先生

「女子に社会で役立つ技能を」
教育界の先覚者34名が共同設立

聞き手1
サピックス
教育情報センター所長
神田 正樹

神田 共立女子学園は130年以上の歴史を持つ伝統校です。初めに学園の沿革と、先生がかかわってこられた経緯についてお聞かせください。

前田 母体である共立女子学園は、1886(明治19)年に共立女子職業学校として設立されました。女性が社会で活躍することがほとんどなかった時代にあって、技能を身につけた社会に役立つ女性を育てるため、教育界の先覚者34名が共同して設立したのです。「共立」という校名はそこに由来しています。

 わたしが本校に入学したのは、校長就任の年からちょうど50年前です。高校・大学と共立で学び、大学卒業後に3年ほど他校で教員を経験してから本校に参りました。中学生のころから教員をめざし、将来は母校で教鞭をとりたいというのが夢でしたから、それがかないました。

神田 34名の方々を拝見すると、教育者の鳩山春子さん、大日本図書の社長だった宮川保全さん、永井荷風のお父さまで東京女子師範学校(現・お茶の水女子大学)教授だった永井久一郎さん、東京大学法学部初代学部長で日本地震学会初代会長だった服部一三さんなど、当時の社会で影響力を持っていた人物が名を連ねています。そうした方々が共同で女子のキャリアを育てていく学校を設立されたのはすばらしいことです。

前田 立場や専門の異なる人たちの手で設立された学校であることから、「それぞれの強みを生かしてチームで目標を達成する」という精神が校風として根付いています。その精神を今年から「共立リーダーシップ」ということばで表現することにしました。わたしも卒業生として、知らないうちにそうしたものが身についた気がします。たとえば、人との“距離”の取り方です。本校は1学年約330名と生徒数が多いですが、全員と仲良くなる必要はなく、ある程度の距離を保ちつつ、必要なときに協力をする、認め合うという緩急の付け方のようなものが求められます。他者の考えを尊重できるようになるには時間はかかるでしょうが、うまく折り合いをつけていかないと物事は進みません。

神田 おっしゃるとおりですね。最近は海外の名だたる研究機関で日本の女性がディレクターをしているケースが増えています。プライドが高い研究者が集まってしのぎを削るなかでどう調整を図っていくか。そんなときに生きてくるのが「共立リーダーシップ」のような力だと思います。完璧に同じ価値観を持つことはできませんが、許容できるものを互いに認め合いながら、それをどう生かしていくかを学んでいくことは、これからの社会で必要ですね。

前田 自分自身を振り返っても、物事が順調に進むために自分はどんな働きをすればいいのか、あるいはその場でどう楽しめるかといったことが自然に身についた気がします。本校は生徒数が多いことから「東京一出会いの多い女子校」をキャッチフレーズにしています。さまざまな生徒がいますから、どうしたら限られた場所で大勢の人が楽しみながらいろいろなことをうまくやっていけるか、という感性や寛容さが自然に育っていくのかもしれません。

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23年4月号 さぴあインタビュ ー/全国版:
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