受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

卓越した体験学習を軸に
グローバルスタンダードの
「学力」と「人間力」を育成

海城中学高等学校 校長 大迫 弘和 先生

「人が人らしく生きるために」
役目を果たせる教育をめざす

神田 最初に、貴校の沿革と大迫先生が校長に就任された経緯をお聞かせください。

大迫 本校は1891(明治24)年、佐賀藩出身の古賀喜三郎により、「国家・社会に有為な人材を育成する」という建学の精神の下、海軍兵学校に入るための予備校として設立されました。この学校は戦後まもなく閉校命令を受けましたが、何とか乗り越えて再スタートを切りました。そのときの先生方の思いは、国のために身をささげることを良しとした戦前の教育の反省から、「生徒一人ひとりに寄り添って、個々の自己実現を支援することを最大の使命としよう」というものでした。この思いを核に練り上げられたのが公正さを前提としたリベラリズムの教育理念であり、リベラルでフェアな精神を持つ「新しい紳士」の育成という教育目標です。

聞き手1
サピックス
教育情報センター所長
神田 正樹

 わたしは海城学園理事長の古賀喜博先生からお誘いを受け、この4月に校長に就任しました。それまでは国際バカロレア(IB)教育に関する仕事、主に文部科学省やIB機構に協力して、国内でのIB普及に努めてきました。伝統ある学校の校長職とは本質的に違う仕事をしてきましたが、それでもお引き受けすることにしたのは、海城学園の教育がわたしの教育観と重なることを強く感じたからです。

 本校は「新しい紳士」を育てるうえで重要なものとして「新しい学力」と「新しい人間力」を掲げています。これはわたしが教育について抱いていた考えに近いものであり、校長として海城の教育をより強くしていくことに貢献できるのではないかと思いました。

神田 先生の教育観の根底には、どのようなものがあるのでしょうか。

大迫 生きるために生活があります。それなのに、生活をしながら「生」を失っていくという、現代社会の病理のようなものがあります。教育も同じです。生きるために教育があるのに、教育を受けることによって「生」を喪失していくことがあります。わたしはそういう教育に早くから強い疑問を持っていました。「生」と教育はつながり合っていなくてはならない。そう思ったときに出会ったのがIBです。人が人らしく生きていくための役目を果たすのが教育であり、それがしっかりできていれば、いろいろな意味で結果が出ます。たとえば受験について、子どもたちが希望する大学に行けるよう支援するのは中等教育機関の使命ですが、「生」と結びつく教育をしていれば、そのような使命は自然に達成されるのです。本校にはそういうシナリオが書ける条件がそろっていると思います。

 AIが社会に浸透し、ChatGPTも登場しました。そのような世界では「知とは何か」を問い、「知」を価値化していくことがとても重要になります。教育を通して子どもたちのなかにどう「知」を形成していくかがこれからの課題です。数学には数学知が、社会科には社会知が、体育には体育知があるように、各教科には「教科知」があります。それぞれの教科において、本校はすでに非常に高い「知」を子どもたちのなかに形成しています。その教科知の強さをより深く価値あるものにし、海城全体の教育の知として高めていく。それが「新しい学力」「新しい人間力」の総称になると思います。それは日本がこれからつくっていくべき教育のモデルにもなり得るものです。本校はそれくらいの志を持てる学校であり、先生方はそういうことに対して応える用意ができていると思います。

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23年8月号 さぴあインタビュ ー/全国版:
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