受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

きめ細かな教育体制の下
仲間と体験する学びと感動が
未来に向かう力につながる

攻玉社中学校・高等学校 校長 藤田 陽一 先生

6年間を三つのステージに分け
独自のクラス編成を導入

神田 校訓は「誠意・礼譲・質実剛健」で、学力の養成だけでなく、人間、人格をつくることを大切にしていますね。教育システムとしては6年間を三つのステージに分け、各ステージで「変わる」をキーワードに目標を立てています。ステージ1(中1・2)の目標は「『変わる』ためのチカラを育む」。具体的にはどのようなことに力を入れていますか。

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校長 藤田 陽一 先生

藤田 中1・2の段階では学力だけではなく、生活習慣などの基本をしっかり身につけてほしいと考えています。入学してすぐに宿泊行事の校外オリエンテーションがあります。ここで攻玉社とはどんな学校で、どんな時間の使い方をしていくのかを学んでもらいます。それを踏まえたうえで、伸び伸びと学校生活を送ってほしいですね。中学受験を経てきた子どもたちは、塾の勉強は一生懸命にやった半面、学校の宿題をきちんとこなさなかったという生徒もいます。そのためか、入学してからも課題をやらない生徒が結構いますが、それは違います。今も定期試験が終わったばかりなので、成績が思わしくなくて呼び出されている生徒が何人もいます。この最初の時期に「やるべきことはやる」という基本的な生活習慣や自己管理能力をしっかり身につけさせたいと考えています。

神田 ステージ2(中3・高1)は「『自ら変わる』ため。意識と実力を蓄える」とあります。みずから考え行動する意識、課題を見つけ解決する力を鍛えるという時期ですね。

藤田 6年間のなかでどうしても中だるみといわれる時期があります。でも、高2では文系・理系に分かれますから、高1の終わりまでに自分の進路を見つけなくてはなりません。この時期には卒業生を招いて体験談を語ってもらうなど、キャリアガイダンスを進めていきます。「数学が苦手なので文系」「古典が嫌だから理系」といった選び方では先々何も見いだせません。今は好きなことがあっても、それが文系なのか理系なのかはっきりと分けにくいところがあります。その意味で進路を選びにくい状況ですから、自分のやりたいことを早く見つけようという指導を心がけています。

キャプションあり
上/学園資料展示室には、創立者・近藤真琴をはじめ、卒業生に関する貴重な資料や写真などが展示されています
下/正門から階段を上った4号館入り口に設置されている、創立者・近藤真琴の銅像

神田 高1の段階で自分の目標を明確にできれば、ゆとりを持って準備ができますね。ステージ3(高2・3)になると、「仲間とともに『変わる』。絆や人間性を育む」とあります。

藤田 高2ともなると、学校の中心として活躍してもらわなくてはなりません。輝玉祭(文化祭)も体育大会も生徒たちが仕切りますから、その中心となってもらいます。ただ自分勝手に進めるのではなく、教員に対して報告・連絡・相談はしっかりとやったうえで、創意工夫をしながら仲間と共に取り組むことを通して成長してもらいたいですね。大学入試でも「仲間と共にがんばるのだ」「団体戦で戦うのだ」というところは大切にしています。

福泉 ステージ2になると選抜学級が1クラス設置されます。最初から優秀な生徒を取り出すのではなく、ステージ1でしっかり基礎学力を身につけてから選抜する形ですから、生徒にとっては大きな励みになりますね。

藤田 中3と高1で選抜学級を1クラス設け、1年ごとに定期試験の成績などで入れ替えを行っています。これも中だるみをさせないための一つの方策です。選抜学級に入れなくて落ち込んでも困りますが、「もっとがんばろう」という意識を持つ生徒が多いようです。

福泉 ステージ3ではクラス編成が変わります。これも独自のシステムですね。

藤田 高1までは1クラス40名で6クラスですが、高2と高3は1クラス30名ずつの8クラスになります。中1のクラスを少人数にする学校は多いですが、本校のように、高学年を少人数クラスにするのは珍しいと思います。これは能力・適性・進路希望に応じたきめ細かい指導を行うために、2010年から導入しているものです。

神田 手を掛けたい時期に少人数のクラス編成にして、進路について手厚く対応していくということですね。卒業生の方々が書かれた文章を拝見しましたが、皆さん、進路選択で先生方にとてもお世話になったということを書かれていて、納得がいきました。

23年10月号 さぴあインタビュー/全国版:
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