受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/関西情報

自主性を育む自由な校風
部活動や行事にも全力投球し
将来を切り開く力を育む

東大寺学園中・高等学校 校長 本郷 泰弘 先生

東大寺を母体とした
97年の歴史を持つ伝統校

聞き手1
サピックス小学部
関西統括責任者
立見 貴光

立見 まず、貴校の歴史から伺いたいと思います。

本郷 本校は、1926(大正15)年、東大寺の僧侶たちが勤労青少年のために、境内に設立した夜間中学「金鐘中等学校」をルーツとしています。当時は、勉強も東大寺の僧侶たちが教えていました。戦後の1947(昭和22)年には、同じ校舎で昼間の時間帯に学ぶ「菁々中学校」が設立されました。そして1963年に全日制の高校を併設し、現在の学校名に変わりました。

 設立当初は東大寺の境内にある小規模な学校で、中学は1学年2クラス、高校は1学年3クラスでしたが、1986年に現在の地(奈良市山陵町)に移転し、中高合わせて1200名という規模になりました。生徒の数は増えても、校風は変わりません。生徒を管理して型にはめるのではなく、一人ひとりの思いを大切にする自由な校風はずっと受け継がれています。

立見 本郷先生は、今年4月に校長に就任されましたが、それまで学校とはどのようにかかわってこられたのでしょうか。今後の抱負もあわせてお聞かせください。

本郷 わたしは京都の府立高校で英語の教員として14年間勤めた後、24年前に本校に来ました。本校では、生徒指導部長を4年間、中1から高3までの学年主任を6年間担当するなどし、その後、教頭を8年間務め、今年度から校長になりました。

 伝統校であっても、時代とともに変えていかなければならないものは当然あります。たとえばICTの導入などがそれに当たるでしょう。また、大学合格実績をもっと上げ、世間の評判を上げていくべきだというプレッシャーも、場合によってはかかるのではないかと思います。それでもやはり、クラブ活動や行事など学校生活を楽しむ本校の伝統や、自由な校風は変えてはならないと考えています。10年くらいたったら、以前と変わったと言われる点はあるでしょうが、「東大寺は変わってへんなあ」と、卒業生に言ってもらえるような学校であり続けたいというのが、わたしの最大の抱負です。

立見 次に、貴校が掲げる「基礎学力の重視」「進取的気力の養成」「豊かな人間性の形成」という三つの教育方針についてお聞きします。そこには、それぞれどんな意味が込められているのでしょうか。

本郷 まず、「基礎学力の重視」についてですが、ここでいう「基礎学力」とは、大学や大学院で学問や研究を進めていくときに必要な学力のことを指します。さらにはもっと学びたいという探究心を身につけることをめざしています。次に、「進取的気力の養成」の「進取的気力」とは、物事に進んで取り組み、やり切る力です。ですから本校では、学校行事においても生徒がすべての物事を自分たちで決め、最後までやり抜くことを大切にしています。そして、「豊かな人間性」とは、他人の気持ちに配慮し、良好な関係を築く力を意味します。

 これら三つの教育方針のなかには、「自由」ということばは使われていません。しかし、個性や自主性、しなやかな感性を育むうえで、「自由」という環境は不可欠です。したがって、不合理なもので生徒を縛りつけたり、生徒に従順を強要したりすることはなく、生徒の「自由」を最大限に尊重しています。そして、この良き伝統を、今後も大切に守っていきたいと考えています。

メインビジュアル

23年11月号 さぴあインタビュー/関西情報:
目次|1|

ページトップ このページTopへ