受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

世界での活躍を見据えた
多様な体験を通して
高い目標に向かう力を養う

巣鴨中学校・高等学校 校長 堀内 不二夫 先生

「がんばれば手が届く」目標なら
子ども自身が手を伸ばす

聞き手1
サピックス
教育情報センター所長
神田 正樹

神田 初めに、学園の沿革についてご紹介いただきたいと思います。

堀内 本校の歴史は1910(明治43)年に、わたしの祖父で哲学者の遠藤隆吉が私塾「巣園学舎」を創設したときから始まります。1874年に前橋の士族の家に生まれた祖父はとても優秀だったそうで、上京して東京帝国大学(現在の東京大学)へと進みますが、俸禄(給与)を失った侍の家でしたから貧しく、親が家に残っていた刀や槍を売って学費を工面してくれたようです。そして、大学卒業後、東京高等師範学校(現在の筑波大学)の講師になり、早稲田大学などでも教鞭を執った後、旧巣鴨村に自分の学校を創設しました。当時、この辺りは原野と畑と雑木林しかない江戸の外れでしたが、「本郷から歩いて40分、いずれこのあたりも繁華になる」と考えて、この地に学校をつくることを決めたそうです。

神田 今やこの地域はとてもにぎやかです。学校も池袋駅から徒歩圏内ですから、遠藤先生は先見の明がおありだったのですね。

堀内 旧制の巣鴨中学校が創立されたのは1922(大正11)年です。教育の中心に据えたのが「硬教育」で、これは「自分で努力をしよう」という努力主義を意味します。祖父は非常に苦労して勉強をした人で、お金がなくて本などを買えなかったので、すべて自分で書き写していたそうです。そうやって努力してきたことが考え方の背景にあるのだと思います。

神田 それこそが「硬教育」を掲げた基盤なのですね。緻密なカリキュラムの下で中高6年一貫の「英才早教育」を行っているとのことですが、それはどのような意味だととらえればいいでしょうか。

堀内 「英才早教育」とは、今でいう先取り学習です。どの子どもにもいろいろな可能性があり、やり方によってはいくらでも伸びていきます。少しでも可能性があるなら、目標を与えてあげることが大切です。届きそうもない目標ではなく、手を伸ばせば爪が引っかかる、それくらいの目標を与えれば、子どもたちはみずからがんばります。そうやって成功体験を重ねるうちに、さらに上をめざすようになります。仮に失敗しても、努力したことはそのまま財産になります。その財産を積み重ねていけば、また次の目標に進めるのです。

神田 高2からは進路別のクラス編成となりますが、「文科系」「理科系」ではなく、「文数系」と「理数系」という表現を使っていますね。これは、幅広い教養を身につけながら文科系・理科系の高等教育に進むという意味の表現なのでしょうか。

堀内 本来なら文理すら分けたくないのですが、大学受験があるのでやむを得ず分けています。「文数系」としているのは、文科系は英語・国語と社会科だけをやればいいのではなく、数学や理科もやるんだよ、ということを示すためです。たとえば、経済学部に進むにしても、数学は必須です。宇宙航空研究開発機構(JAXA)で「はやぶさ」のオペレーションをしているOBがいて、本校で講演をしてもらったことがあります。彼は本校で文理の区別なく学び、地学の知識も一定程度ありました。「はやぶさ」が地球に帰還し、採取した岩石を分析するとき、JAXAには地学をやっていた職員はほとんどいなかったそうです。「地学を学んでいてよかった」「巣鴨でよかった」と言っていました。大学で専門分野を学ぶ前に、中等教育では幅広く知識を身につけておかなくてはならないと思います。

神田 学びが広ければ広いほど、専門分野でもそれが生きてくるということですね。

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24年2月号 さぴあインタビュ ー/全国版:
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