受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

人と人との交わりを軸に
豊かな学力と人間力を育み
希望の未来へと送り出す

芝中学校・高等学校 校長 武藤 道郎 先生

教員の個性と研鑽を生かした
教科の枠を超えた多様な学び

キャプションあり
上/校舎の1階に設置された「芝ミュージアム」。貴重な映像記録や資料によって学園の歴史を伝えます
下/図書館の蔵書数は約5万8000冊。生徒の利用率は高く、昼休みや放課後はいつもにぎわっています

福泉 教科の学習については、英語・数学・国語は大学受験に対応して先取り授業を行う一方で、理科・社会・音楽・美術・家庭科なども主要教科として大切にしているそうですね。

神田 卒業生たちも「受験だけの勉強を押しつけられなかった」「自分のしたい学びを先生が後押ししてくれた」と書いていますね。

武藤 そうですね。教科の枠を超えていろいろなことをやっています。東京慈恵会医科大学や東京理科大学、大正大学、金沢大学などと高大連携もしています。このうち、東京慈恵会医科大学では昨年、医師と一緒に救命救急や白血病についてのワークショップを行いました。北海道大学や九州大学での研究室見学もあります。

 そのほか、近隣のオランダ大使館のナショナルデーに呼ばれてアカペラ部がオランダ国歌を歌ったり、東京タワーのイベントで吹奏楽部やギター部が演奏したり、増上寺の大掃除に参加したりするなど、地域とのつながりも広がっています。学校の修学旅行や海外研修もありますが、その一方で、外部からお誘いを受けて希望者がいろいろなところに出掛けています。

 生徒が自分で見つけて、個人でエントリーしている活動もたくさんあります。以前はその参加者は欠席扱いになっていたのですが、内容を確認し、生徒たちの安全や保護者の安心も考慮して、校長判断でルールを緩めて有意義なものについては公欠にするようにしました。生徒がやりたいことも、保護者の価値観やわが子にかける期待も広がっています。もちろん、わたしたちのいちばん大事な任務は中等教育の学力保証です。そこは担当の教員を中心にきちんとやっていますし、生徒には「勉強に影響するのであればルールどおりに厳しくするよ」と言っています。

神田 生徒がやりたいことを学校も応援するということですね。もちろん、学習に影響がないよう補習体制もしっかり整っていますし、本当に「面倒見が良い」というのはこういうことだと思います。

武藤 本校では「芝漬ゼミ」という課外講座を開いています。教科の枠を超えた幅広い内容の講座を教員が設定するものです。そこでは教員研修の成果を生かした新しい講座がどんどん生まれています。本校では教員一人ひとりに教育研究費をつけています。たとえば、英語科のある教員は4年かけて社会科の教員免許を取得しました。その教員はオーストラリア出身なので、オーストラリアの街をテーマにした地理を英語で教えたいと言ってきました。また、国語科の教員が研修で中国語を学び、中国語で漢文の授業をやりたいとか、ドローンの免許を持っている教員が授業でドローンを使いたいとか、教員の研鑽の成果がさまざまな方向に探究を広げています。

谷口 海外研修は中3・高1の希望者によるニュージーランドとカナダの短期研修があります。そのほか、新しい短期研修も始まるそうですね。

武藤 ニュージーランドとカナダ以外に、ベトナム研修も以前からあります。南部のメコンデルタにある村の農家にホームステイし、現地の人や子どもたちと交流してきました。ただ、最近は子どもの数が少なくなってきているなど情勢が変わり、見直しを迫られています。シンガポールやモンゴルなどいくつかの案が出ていて、検討しているところです。OBたちがいろいろな話を持ってきてくれるので、いくつか設定して、希望者が行き先を選択してグループで訪問できるようなシステムを考えています。

24年4月号 さぴあインタビュー/全国版:
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