受験ライフをサポートする進学情報誌 さぴあ

さぴあインタビュー

2026年11月号から転載

成城学園中学校高等学校

人と人、知識と経験
つながる学びが視野を広げ
自分らしい未来へと導く

成城学園中学校高等学校 青柳 圭子 先生

校長 青柳 圭子 先生

明治・大正期の教育革新に貢献した文部官僚で教育者の澤柳政太郎は、1917(大正6)年、理想の教育を求めて成城小学校を創設しました。これが成城学園の出発点です。生徒一人ひとりの天分を伸ばし「自学自習」「自治自律」を重んじる創設者の教育精神は、今も同校に息づいています。授業に加えて、国内外で行われる多彩な課外活動にも力を入れており、生徒の興味・関心を引き出しながら、探究心を持って主体的に学ぶ姿勢を育んでいます。そんな同校の教育理念と教育内容について、校長の青柳圭子先生に伺いました。

聞き手

サピックス教育事業本部 本部長 広野 雅明

サピックス教育事業本部
本部長
広野 雅明

サピックス小学部 教務本部 遠藤 元

サピックス小学部
教務本部
遠藤 元

個が持つ力、興味・関心を伸ばす
「天分教育」の伝統

広野成城学園は世田谷区成城にあるので、学校名も地名に由来すると思っている方も多いかもしれません。実はそうではなく、もともとは今の新宿区の牛込にあった成城学校から出発したのですね。

青柳本校の創設者は、教育者の澤柳政太郎です。澤柳博士は京都帝国大学や東北帝国大学の総長を歴任し、文部官僚としても近代日本の教育制度の整備に尽力しました。澤柳博士は牛込の成城学校から校長になってほしいと依頼された際、以前から抱いていた「理想の小学校をつくりたい」という思いを実現することを条件に、校長職を引き受けました。当時の成城学校は、陸軍士官学校などへの進学をめざす生徒のための教育を行っていましたが、澤柳博士はそこに新しい考え方の小学校をつくろうとしたのです。それが1917(大正6)年に創設された成城小学校です。その卒業生が通える中学校も創設され、この小学校と中学校が世田谷の地で成城学園として独立したのが1925年。翌1926年には旧制7年制の成城高等学校が創設され、中学校はその尋常科(4年制)に組み込まれました。成城大学が新制大学として発足したのは1950(昭和25)年です。大学から始まった多くの付属校とは異なり、本学園は小学校から始まったのです。

澤柳博士が掲げた教育理念は、幼稚園から大学・大学院までを擁する総合学園となった今も受け継がれています。その一つが「天分教育」です。子どもたちが持つ才能「天分」を引き出し、伸ばしていこうというもので、学校がめざす子ども像に当てはめるのではなく、一人ひとりが持っている力や興味・関心を伸ばしていくという考え方です。それぞれが持つ良いものを引き出すことこそが教育だと考えています。

広野大正期にできた学校ならではの自由な校風が、脈々と息づいているのも特徴ですね。

青柳明治期に創設され、富国強兵の側面が強かった学校とは異なり、澤柳博士がめざしたのは「大正」という新しい時代の学校でした。そのために欧米を視察し、新しい教育の考え方や理論を取り入れて学校をつくったのです。だからこそ、今でも古さを感じさせず、教育の普遍的な価値が日々の活動に反映されているのだと思います。それが「天分教育」であり、「自学自習」「自治自律」という、主体的に学ぶことを重視した教育です。当時、同様の考え方を持つ学校も多かったと思いますが、そのなかでもモデル校にしたいという意気込みがありました。

成城学園は規模の大きな学校ではありません。家族的といいますか、幼稚園から大学までの交流を大切にし、つながりのなかで学ぶことを重視しています。これを澤柳博士は「和合」ということばで表していました。わたしたちは、こうした学びを100年以上にわたって続けてきました。これからの時代は、人と人、人と物、物と物をつなげていく力、さらにチームとして課題を解決していく力が重要になります。本校ではこれまで、教科の学びと課外活動や行事などの体験を通した学びを両輪としてきました。学内外での体験を学びにつなげ、社会とのかかわりに生かしながら、社会情動的スキルも高めていく。今後も、この方向性は変わりません。

広野個性を尊重することよりも、集団の規律を守れる子どもを育てることが重視された時代がありました。そのころはご苦労もあったと思いますが、時代は変わり、AI時代だからこそ個性を重視した教育が必要だという考え方になってきました。創立者が考えた教育こそ、今の社会で求められているのではないでしょうか。

青柳おっしゃるように、今の社会は本校の教育との親和性が高いと思います。次期学習指導要領も、同じ方向性で設計されています。文部科学省の方々は、文部官僚だった澤柳博士の著書や論文を読んで研究されたとも聞いています。本校としても、これまでの教育スタイルをより良い形でアップデートできるよう、進めていきたいと考えています。

メインビジュアル

それぞれが好きなものに挑戦する
中高合同の「SAILプログラム」

遠藤今回、キャンパスを訪れて感じたのは緑の豊かさです。一度ここに足を運んだだけで、学園を好きになる方もいるのではないかと思いました。こうした環境で6年間、さらには大学までの10年間を過ごさせたいと思う保護者の方は多いのではないでしょうか。

広野自然を身近に感じられないエリアに住んでいる子どもも多いので、緑の多い学校に行けば、そこで見つけた植物や昆虫をきっかけに、生物に興味を持つこともあると思います。その意味で、このキャンパスは何かの出発点になりそうですね。

青柳実は、中1から参加できる探究型のプログラムがあり、この自然をテーマにしたキャンパスツアーも考えています。成城学園の植物は長野県の林業総合センターの方が管理していて、折に触れてチェックやアドバイスをしてくださいます。その方からレクチャーを受けた生徒が、地域の方にキャンパスの自然を紹介するプログラムを、世田谷区と連携して行おうと計画しています。

遠藤その中1から参加できる探究型のプログラムとは、どのようなものですか。

青柳これは「SAIL(Seijo Academic Interactive Learning)」といって、中1から高3までの希望者を対象とした課外教育プログラムです。放課後や長期休暇を利用し、社会科見学的なものから宿泊を伴うプロジェクト学習まで、さまざまな活動を行っています。フィールドワークとしては、東京証券取引所、外務省、日本弁護士連合会、テレビ局など、世の中の動きを体感できる施設訪問があります。また、プロジェクト学習としては、沖縄県での新規事業開発プログラムや、福島県でのフィールドスタディなどがあります。この福島県でのプログラムは「ふくしま学宿」といって、東日本大震災からの復興に向けて活動している方々からお話を伺い、「災害の教訓を未来にどう生かすか」をテーマにディスカッションします。灘や筑波大学附属駒場の生徒と一緒に参加し、地元の高校生とも意見交換をします。

遠藤中学生が高校生と一緒に学び、行動するプログラムなのですね。中学生の参加者は多いのですか。

青柳多いですよ。積極的に参加しています。高校生たちが中学生をかわいがってくれるんです。「ふくしま学宿」では灘と筑駒と本校の生徒とが合宿をします。原子力など専門性の高い勉強をしている高校生たちが来ますが、中学生たちは「あの人たちについていきたい」という気持ちになって、とても熱心に勉強するようになります。他校の高校生も本校の中学生をかわいがってくれて、良いつながりができています。学年や成績の条件を付けず、「やりたい」「行きたい」と思う生徒が誰でも参加できる、それがこのプログラムの良い点です。

広野「和合」というお話もありましたが、幼稚園から大学までが同じキャンパスにあって、つながりのなかで学んでいく、そんなアットホームな雰囲気が伝わってきます。

学年集会や各種発表会などができる「001教室」。約350席あります

学年集会や各種発表会などができる「001教室」。約350席あります

カフェテリアと図書室をつなぐ広々としたコリドー。ラーニングコモンズとして開放されています

カフェテリアと図書室をつなぐ広々としたコリドー。ラーニングコモンズとして開放されています

「探究」からより深い「研究」へ
来年から新規のプログラムを導入

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生徒それぞれが持つ良いものを引き出す
ことこそが教育だと考えています。

遠藤高校での探究学習には、どのような特徴がありますか。

青柳高校生はこれまで全学年、教員が立案したコースに参加する形式の課外教室を行っていました。たとえば北海道の大雪山国立公園内にある然別湖での自然体験、愛媛県今治市と広島県尾道市とを結ぶしまなみ海道でのサイクリング、乗馬体験、農業ボランティアなど、さまざまなコースがあり、そのなかからやりたいことをいくつでもやっていいというものです。来年度からはそれを高1に限定し、「SEED」という名称のプログラムにしようと考えています。成城大学の先生方にもサポートしていただきながら、探究のプロセスを段階的に踏んでいくものを考えています。

「SEED」で学んだことは、高2からの探究学習につながります。高2・3では、より専門性・研究性の強い「ゼミナールⅠ・Ⅱ」という探究学習を行います。大学での研究を視野に入れたテーマ研究を進め、最終的に論文執筆まで行います。

広野今はどの学校でも、探究的な学びに力を入れるようになりました。もともとは1960年代から、貴校や国立大学の付属校などが、一方通行の授業では限界があるとして研究を始め、その成果が現在の教育にも生かされているのだと思います。ICTの活用が進むなど、学びの形が大きく変わっているだけに、子どもたちには良い体験をたくさんしてほしいですね。

英語教育と留学プログラムで
グローバル力を養う

広野英語教育も含め、グローバル教育にも力を入れていると思います。成城大学への推薦入学という選択肢もある学校ですから、海外留学プログラムで少し長めのものに挑戦する生徒もいるのではないでしょうか。グローバル教育にはどのような特徴がありますか。

青柳英語はコミュニケーションです。4技能はもちろん、英語でしっかり話ができる力、自分の考えを伝えられる力を身につけさせることを重視しています。本校では「Global Competence Program」を導入し、6年間を通してコミュニケーションスキル、批判的思考力、異文化理解、リーダーシップ、チームビルディング力などのグローバルコンピテンスを伸ばしています。これは外部専門機関で研修を受けたネイティブの教員が行うもので、英語を使って自分や他者を知り、世界について考えるプログラムを通して、広い視点を育てていきます。授業は週1回、中1から高1まであります。また、国際交流も重視しています。アメリカ、カナダ、オーストラリアなどでの短期・長期の留学制度があり、2025年度からはターム留学も始めました。高1の3学期をまるまるオーストラリアの学校で過ごすものです。

広野国際交流プログラムのなかにはインドやインドネシアなどでの研修もありますね。これはどのような内容ですか。

青柳探究学習の一環として行う高校生対象のプログラムです。一定のテーマの下、現地でインタビューや調査を行い、課題解決に向けた具体的な行動計画を立てます。インドでは貧困問題、インドネシアのバリ島ではゴミ問題をテーマに、現地の社会起業家や若手リーダーと対話しながら解決策を考えていきます。そのほか、フィンランドやベトナムでも同様のプログラムを行っています。こうした研修は、自分の興味・関心を見つけるきっかけとなり、自分に何ができるか、進路にどう生かせるかを考えることにもつながります。

全面人工芝の広々とした第1グラウンド。ラグビーの公式戦が行える広さの第2グラウンドもあります

全面人工芝の広々とした第1グラウンド。ラグビーの公式戦が行える広さの第2グラウンドもあります

カフェテリアは約360席あり、中学生も利用可能。作りたてのお弁当など、テイクアウトメニューもそろっています

カフェテリアは約360席あり、中学生も利用可能。作りたてのお弁当など、テイクアウトメニューもそろっています

高校では進路別のコース制を採用
学年の5~6割が内部進学

イメージカット

遠藤高校から進路別のコース制になりますが、これは何年生からですか。

青柳高2から三つのコースに分かれます。成城大学への進学を中心に多様な進路選択が可能なAコース、主に他大学の文系学部への進学をめざすBコース、主に他大学の理系学部をめざす理数コースです。

広野以前は成城大学に進学する生徒が多かったと思いますが、今はいかがですか。

青柳成城大学への推薦入学枠は生徒全員分を用意していますが、現在の内部進学率は5~6割ほどです。理系学部がないこともあり、他大学の受験指導にも力を入れています。コース制を導入したのは、生徒の進路希望にきちんと対応する学校でありたいと考えているからですが、大学も協力してくれます。成城大学への被推薦権を保持したまま他大学を受験できる制度も設けており、生徒たちも中高6年間で多様な学習ができるはずです。

広野恵まれた環境ですね。成城大学との高大連携はどのように進んでいますか。

青柳生徒が大学の学びを体験したり、大学の先生方が生徒たちの探究活動にかかわってくださったり、大学生が探究活動をサポートしてくれたり、さまざまな形で連携が進んでいます。新しい取り組みとして、大学の先生や学生に協力していただき、他校と合同で探究学習をするイベントも計画しています。大学では入学前教育にも力を入れており、今後さらに充実させる考えです。特に英語については、成城学園では初等学校から大学までの一貫教育を行っているので、その連携をより充実させようと検討しています。

広野それでは最後に、受験生と保護者の方にメッセージをいただけますか。

青柳本校はもともと実験学校としてつくられた側面があり、時代に合わせたプログラムがたくさんあります。若い教員も増えてきたので、新しいものを取り入れながら、日本の教育の一つのモデルになるようなはたらきかけをしていきたいと考えています。

わたしたちは変化が激しい時代のなかを生きていかなくてはなりません。たくさんの不安があると思います。本校も手探りの部分はありますが、その時々の状況をしっかり見据えて、共に歩んでいきたいという気持ちで努めています。受験生の皆さんも不安はあるでしょうが、自分の持っている力を精いっぱい引き出すという気持ちで、受験勉強を進めていただきたいと思います。

広野本日はありがとうございました。

集合写真
共学校 私立 東京

成城学園中学校高等学校

〒157-8511 東京都世田谷区成城6-1-20 小田急線「成城学園前」駅より徒歩8分
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