受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

多様な挑戦を重ねながら
世界に目を向けて未来を開く
「タフで愛ある女性」を育てる

鷗友学園女子中学高等学校 校長 柏 いずみ 先生

枠から一歩踏み出してみることで
自分のなかに必ず変化は起きる

先生写真
校長 柏 いずみ 先生

神田 柏先生も鷗友学園の卒業生とお聞きしています。

 わたしは高校入試がまだあった時代に、高校から鷗友学園に入りました。牧師の家庭で育ったこともあり、わたしの家には、まるで駆け込み寺のように、さまざまな事情を抱える人たちが出入りしていました。子どものころはそれが嫌で、そこから逃げ出したいという思いで、いつも独りでピアノを弾いていました。高校でも、「ピアノに専念したい」という理由で、最初のころは、クラスメートとも距離を置いていました。もともと友だちづくりが得意ではなかった面もあります。

 でも、そんなわたしを、中学から内部進学してきた人たちが、運動会でのムカデ競走のメンバーとして誘ってくれたのです。練習は大変でしたが、一生懸命にみんなと練習するうちに速く走れるようになり、気づいたら、友だちと和気あいあいと過ごすのが楽しいと思える自分に変わっていました。それが鷗友学園に入ってのわたしの変化です。

 今年4月の始業式でも、「これから、皆さんのなかにも必ず変化が起こりますよ」と話しました。「自分はこんな人間だ、わたしなんか無理だ」なんて思っている人もいるでしょう。しかし、誰かとかかわれば変わるかもしれません。さまざまな経験を積むなかで、変わるかもしれないのです。

キャプションあり
上/約5万冊の蔵書のある図書館には、創設者・市川源三の銅像が設置された静かなスペースもあります
下/約2万冊の洋書が並ぶLLライブラリー。中学の3年間で、100万語の読破が目標です

神田 勇気づけられるお話です。先生は生徒たちに「困難な時代のなかでも、タフで、愛ある人に育ってほしい」ともおっしゃっていますね。

 実は、わたしは本校に講師として勤め始めました。いつ専任になれるかわからなかったので、オファーがきたらすぐ「担任もできます」と言えるようにしておきたいと考え、大学の夜間部で教育学や心理学などを学びました。それから海外で音楽を学びたいと思っていたので、夏休みにはパイプオルガンの修業のためにドイツやオーストリアなどに行きました。ことばがすべてわかるわけではありませんが、行った先々で、音楽をやっている人たちとさまざまなことを語り合いました。自分しか頼れない環境のなかに自分を追い込んで、いろいろな経験をしました。

 「タフ」ということばは、そんな自分の実感から出てきたのです。何が起こるかわからない時代にあっては、自分を律することができる力、きちんとセルフコントロールできる力、そういう強さが必要です。それがないと、どんなにすばらしい能力や知識、技術があっても社会のなかで生かせないでしょう。そうした強さは、中高時代に失敗や思いどおりにいかない体験をたくさんするからこそ、身についていくものではないかと思います。

神田 わたしも、失敗を重ねていくからこそ、自分が進むべき道が見えて、他人の痛みがわかるようになるのだと思います。その意味で失敗は若者の権利だといえるのではないでしょうか。

24年10月号 さぴあインタビュー/全国版:
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