受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

共に学ぶ喜びを感じながら
未来を心豊かに生きる
たくましさを育む

日本女子大学附属中学校・高等学校 校長 椎野 秀子 先生

100年以上も前に確立された
人格教育を柱とする女子一貫教育

神田 今年で創立120周年を迎えた伝統ある学校です。初めに沿革についてご紹介ください。

聞き手1
サピックス
教育情報センター所長
神田 正樹

椎野 本校の創立者である成瀬仁蔵は、1901年に日本初の組織的な女子の高等教育機関として、日本女子大学校を開校しました。これが今の日本女子大学です。当時はあらゆる面で男女の不平等が見られ、女子の教育に対する一般的な理解も低い時代でした。そんななか、成瀬は「人格として女性を認めていくことがなければ近代国家にはなれない」と考え、人格教育を基本とした女子大学校と、現在の附属中学校・高等学校の前身である附属高等女学校を創設しました。伝統ある女子の高等教育機関は、裁縫など手に職をつけるところから始めた学校が多く見られますが、それとは異なるところから出発した学校だといえます。

神田 だからこそ、大学校と同時に附属高等女学校をつくられたのですね。しかも大学校を創設して間もなく、小学校と幼稚園も開設されています。今では「中高一貫」ということばが当たり前に使われるようになりましたが、この時代に幼児教育から初等・中等教育、そして高等教育という一貫教育ができていたことに驚きます。開校したときは、500名を超える学生が集まったそうですね。

椎野 日本中から思い一途で女性たちが集まってきました。それこそ離婚してまで来られた方もいました(笑)。

神田 女性解放運動家の平塚らいてうさんも、創設間もない大学校に入学された一人ですね。成瀬先生の「女性を人間として、そして婦人として教育していく」という理念にあこがれて入学されたとか。宮沢賢治の妹の宮沢トシさん、それから『智恵子抄』の高村智恵子さんも卒業生ですね。

椎野 宮沢トシは成瀬の教えを賢治に伝えていて、それが賢治の作品にも表れています。生徒たちは中2で宮沢賢治の作品を精読し、また高村光太郎の『智恵子抄』を読み込むなどしたうえで、東北校外授業に出掛けます。これは60年前から続いている伝統行事で、岩手県花巻市の高村光太郎記念館や宮沢賢治記念館にも行きます。そうすると、授業で学んだことがすっと自分のなかで納得できます。これが、成瀬が唱えた「三段階の学びが人格をつくる」ということです。成瀬は「外から取り入れた知識」(印象)を「整理して自分のものとする」(構成)ことを経て、「ことばに移す」(発表)ことにつなげる、主体的な学びを実践していました。この学びの姿勢は現在も深く浸透し、本校では「知る喜び」「わかる喜び」「伝える喜び」をもって、広く深く物事を探究することを大切にしています。

メインビジュアル
校舎の中央にある吹き抜けの「もみじ劇場」

21年8月号 さぴあインタビュ ー/全国版:
目次|1|

ページトップ このページTopへ