受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

体験重視の学びを通して
時代の変化に対応できる
知力とたくましさを育む

中央大学附属中学校・高等学校 校長 石田 雄一 先生

好奇心を育む「体験型学習」で
実感を伴う学びを実践する

聞き手1
サピックス
教育情報センター所長
神田 正樹

神田 初めに、中央大学附属中学校・高等学校の沿革についてご紹介ください。

石田 本校は1909年に目白中学校として設立されました。その後、1952年の中央大学との合併に伴い、校名を中央大学杉並高等学校と改め、1963年に杉並区から小金井市に移転すると同時に、中央大学附属高等学校に改称しました。附属中学校が開校したのは2010年です。

 わたしは中央大学の法学部で長く教えてきましたので、本校出身者に接する機会は多く、聡明な学生が多いという印象を持っていました。ゼミの課題などでおもしろい発想をするので、どういう教育をしているのかと、以前から関心を持っていたのです。この4月に校長に着任してまず驚いたのは、「自主・自治の精神」が徹底されていることです。文化祭や体育祭のような行事も、生徒みずからが力を合わせてつくり上げていきます。そういう伝統がしっかり根づいているのは、みずから考え、行動できる「自主・自治・自律」の自由な校風があるからだといえます。

神田 主体的・創造的な学習を推進するための、さまざまな教育プログラムをお持ちです。特に中学では、体験型の学習を重視しているのが特色ですね。

石田 動物は生きていくために必要なことを経験から学びます。人間も同じです。経験から学ぶことは大切だと考え、本校では体験を通して学ぶ機会を数多く設けています。たとえば、中学校では学期に5〜6回の「スクールランチ」があります。日本の郷土料理や外国の料理をテーマに、担当グループがその料理が生まれた地域の地理や歴史、料理の由来などを調べて発表し、管理栄養士からの補足説明があり、その後でみんなで実際にその料理をいただきます。そうすると、その地域のことが、「目で見て、匂いを嗅いで、口に入れて味わう」という五感でしっかりと理解できます。

神田 郷土料理はその土地の地形・気候・産業などと結びついています。生徒たちも楽しみながら、考えたり調べたりして学んでいくことができますね。

石田 中央大学には「実地応用の素を養う」という建学の精神があります。そのためか、「中央大学は実学志向なので、実際に役立つ学問しか教えない」と誤解される方がいます。そうではなく、抽象的な知識であっても、具体的なレベルに落として、実際に自分たちの実生活のなかで考えていくことを大事にしているということなのです。物理の法則にしても、理系の学生のためにあるわけではありません。わたしたちは日々、さまざまな物理の法則に従って生きています。それらの法則が、自分たちが生きているなかでどうはたらいているのかを知ることが重要なのです。中央大学ではそうした思考がすべての学問にあり、その精神が本校の教育にも浸透しています。

 中学の英語を例にとると、週5時間の総合英語に加え、「プロジェクト・イン・イングリッシュ」という授業があります。ネイティブ教員による指導の下、グループごとにあるテーマについての考えを英語で文章化し、英語で発表するという内容です。英語を単に知識として蓄えるのではなく、実際に使ってみるわけですね。本校ではこのように、具体的な感覚として理解する体験型の学習が、教科の枠内で、あるいは教科の壁を取り払ったさまざまな形で行われています。

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21年11月 さぴあインタビュ ー/全国版:
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