受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

体験重視の学びを通して
時代の変化に対応できる
知力とたくましさを育む

中央大学附属中学校・高等学校 校長 石田 雄一 先生

教科の枠を超えたテーマで
問題解決に取り組む「教養総合」

先生写真
校長 石田 雄一 先生

神田 中学で体験型の学習を重ね、それが土台となって貴校の学びの柱ともいえる「教養総合」につながっていくのですね。

石田 「教養総合」は本校独自の科目で、学問の分野を超えて問題を解決する力を養うものです。高校生が中心ですが、今年度からは「教養総合基礎」という形で中3から始めることになりました。中学の段階では、調べて発表することがメインになります。その際に重要なのが〝視点〟です。どういう視点から考えるかで、個々の違いが出てきます。たとえば、太平洋戦争のときのミッドウェー海戦について、ある生徒は「ミッドウェー海戦を題材にした映画や小説などと、実際に起こったことに違いはあるのか」という疑問を持ちました。実際に起こったことを調べるのは一つのプロセスですが、それだけでは単なる調べ学習で終わってしまいます。作品に描かれていることと実際に起こったこととの間にどんな違いがあるのか、これは調べて自分で比べてみなければわかりません。「教養総合基礎」では、そのようにみずから問いを立て、独自の視点を養っていくことを重視しています。

 高校生になると、それを引き継いだ「教養総合」で、身近な話題や世界で起きている出来事の問題点を発見し、解決への道筋を考えていきます。高2の「教養総合Ⅱ」ではフィールドワークを中心に、設定したテーマを掘り下げていきます。たとえば、ポーランドをテーマにした年は、歴史や文化を事前に調べた後、実際に中世都市クラクフを訪れ、アウシュビッツの収容所なども見学して、そこで考えたことを発表しました。高3では、文系の生徒は卒業論文、理系の生徒は卒業研究に取り組みます。大学受験を控えていたら、このような学びはできません。これも附属校の利点といえます。

神田 フィールドワークではさまざまな国・地域に行かれています。マレーシアのランカウイ島も何度か訪れていますね。

石田 「教養総合」は担当する教員が1年間でテーマを組みます。ランカウイ島を担当したのは生物の教員で、生物多様性と環境保全、観光産業と自然保護をテーマに活動しました。ホテルの庭に野生動物が来るような環境ですし、現地のサンゴ礁を見たのも貴重な体験だったと思います。ランカウイ島では現在、本校の生徒が制作した観光マップをそのまま使っているそうです。

神田 現地に出掛けて、実際に見て触れて感じることで、新たに生まれる問いもあると思います。答えは出ないかもしれませんが、考え続けていくことがグローバルな視野を養うことにつながりますね。

21年11月 さぴあインタビュー/全国版:
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