受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

体験重視の学びを通して
時代の変化に対応できる
知力とたくましさを育む

中央大学附属中学校・高等学校 校長 石田 雄一 先生

文系でも科学的思考は不可欠
めざすのは文理融合型SSH

聞き手1
サピックス小学部
教務部
野口 伊知朗

野口 中央大学というと法学部が有名です。附属校も文系に強いというイメージがありますが、2018年に文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定されたことで、理系にも強い側面を示されましたね。

神田 そのSSH事業の一つとして、高校生が「SDGsプロジェクト」に取り組んでいますね。活動内容を拝見させていただきましたが、学校のごみ問題の改善や、子育て支援事業を手がける企業と協働して、小金井市の地域活性化に取り組んだほか、多摩動物公園と協働して持続可能な「檻」の開発を考えたグループもあったそうですね。

石田 SDGsの視点から動物園をとらえた際、どんなことが考えられるのかを生徒たちが提案するという活動で、それを見て、わたしは今までの動物園のイメージが一変しました。多摩動物公園は中央大学の多摩キャンパスのすぐ裏にあって、わたしも授業が終わった後などによく行って散歩をしていました。わたしにとって、動物園はレクリエーション施設ですが、種の保存、調査・研究、教育といった大切な役割があります。都市の動物園はスペースが限定されているので、そこで動物に必要な環境をどのようにして実現するかといったことも考えていて、おもしろいことをしているなと思いました。

野口 国語科の先生と理科の生物の先生が一緒に担当されたそうですね。

キャプションあり
上/図書館はリベラルアーツ教育の拠点。約18万冊の蔵書と5500タイトルの視聴覚資料がそろい、パソコンが80台設置されています
下/中学校舎のランチルーム。現在は新型コロナ感染防止のため中止していますが、ふだんは「スクールランチ」でも使用されています

石田 SDGsの授業を通して、生徒はいろいろなことを学ぶことができます。企業とのかかわりもその一つです。その国語科の教員の前職は広告代理店勤務だったので、いろいろな企業とつながりがあります。だからといって教員自身がそのお膳立てをするのではなく、連絡などはすべて生徒にやらせます。企業の人へのメールの送り方から指導していくので、ここでの経験はその先の活動に生きてきます。

 また、SDGsに関しては、授業のほかに本校の教員が立ち上げ人の一人となった「SDGs放課後プロジェクト」というものもあります。他大学の先生や企業の方にも協力していただき、本校の生徒数十名が中央大学の学生や他校の高校生とともに参加して、さまざまなプロジェクトに取り組んでいます。実行力のある熱心な教員がやってくれているので、SDGsのプロジェクトは授業の枠を超えた大きなものになっています。

野口 先生方の熱意と層の厚さが生徒たちの活動の可能性を広げていますね。

石田 本校には優秀な教員が多く、独自のプロジェクトを自分の授業で実現しています。それが周りに波及することで、新しいものが生まれていきます。

神田 先生方はSDGsプロジェクトを通して「文系・理系の垣根なく、さまざまな社会事象に興味を持つ生徒を育てたい」と言われています。文理を超えた思考がないと取り組めませんから、非常に有効なテーマだと思います。

石田 文系科目の教員と理系科目の教員とがセットになって進めるプロジェクトで学ぶことで、文系の生徒も理系の生徒も、将来的にそれぞれのマインドを持って活躍できるようになると期待しています。本校がめざしているのは、文理融合型のSSHです。

 SSH以外でも、来年度から高校で「数学で読み解く現代社会」という科目がスタートします。数学の手法を使って社会を読み解く文系科目で、そうした取り組みを通して、文系をめざす生徒にもサイエンスの素養を持たせて大学に送り出したいと考えています。

21年11月 さぴあインタビュー/全国版:
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