受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

より深く、より広く学び、
みずから考え活動する毎日が
未来を開く力を育てる

吉祥女子中学・高等学校 校長 赤沼 一弘 先生

高大連携講座や研究所訪問など
興味を喚起する多様なプログラム

神田 教育理念のなかに「文理の境を超えて学ばせたい」とありますね。すばらしいことです。

赤沼 ですから、本校では芸術教育も大切にしています。ただ、大学受験のために高2から文系・理系・芸術系に分かれることになっていますから、せめて高1までは幅広く学べるようにしています。

先生写真
校長 赤沼 一弘 先生

神田 幅広い視野で興味・関心のあることを深めてほしいということで、「教養講座」を開講されていますね。

赤沼 教養講座は、「社会(生き方)を知る」「職業を知る」「学問を知る」という三つの柱からなるプログラムで、定期考査後の自宅学習期間を利用して開いています。高大連携による出張講義、大学での体験授業、法律・歴史・経済といった専門家による講演、企業研修、文学散歩など、内容はさまざまです。学年を問わず、興味があれば参加できる形式で、非常に好評です。学校は教員の数も限られているので、それほどたくさんのことは伝えられません。ですから外部の方の力をお借りして、生徒の興味をかき立てるような催しを積極的に取り入れているのです。

中野 高大連携では、さまざまな大学と協定を結んでいらっしゃいますね。

赤沼 最初に高大連携の協定を結んだのは東京農工大学です。地理的に近く、本校の卒業生も多く進学しています。協定を結んでくださった理由をお聞きしたら、本校から入った学生は積極的に実験にも取り組み、ディスカッションなどもしっかりしていて評価が高いというお話でした。ありがたいことです。その後、東京外国語大学、国際基督教大学、東京学芸大学とも連携し、2021年は順天堂大学とも協定を結びました。

中野 それだけ多くの大学が、貴校の生徒に期待を寄せているということですね。

赤沼 生徒たちにはいろいろなチャンスを与えたいので、大学の研究所などに出掛ける機会も多く設けるようにしています。やはり、実際に自分の目で見て触れてほしいからです。

 実は、わたしは大学4年生のとき、先生のつてで理化学研究所を見学させていただいたことがあります。通常なら見られないような実験設備なども見学させていただき、最後に実験器具をつくる施設も見せていただいたのですが、びっくりしました。真っすぐなガラス管が、みるみるうちにらせん状になっていくのです。その技術はすばらしく、こういう職人たちに支えられてわたしたちは実験や研究ができているのだとつくづく思いました。

 その経験があったので、教員になったら生徒たちにもぜひ見せてあげたいと思っていました。それが実現して、現在は高2・3の理系の生徒全員が理化学研究所を一般公開日に見学できるようになっています。研究内容は高度なものばかりなので、全員が理解できるわけではありませんが、授業で学んだ内容とかかわることがあると、気づきを得る生徒もいます。それが大きな刺激になって、学びの姿勢が変わってきたように思います。

神田 理化学研究所といえば、あの渋沢栄一を創立者とし、世界で初めてビタミンAの分離・抽出に成功し、日本初のサイクロトロンを完成させた国内随一の研究機関ですね。また、かつては世界一にランキングされたスーパーコンピューター「京」の開発・運用に当たり、2021年からは「京」の100倍の計算能力で再び世界一に輝いた「富岳」の運用も開始しています。在籍した研究者は湯川秀樹、朝永振一郎、利根川進、前理事長は野依良治と、4人のノーベル賞受賞者を擁していました。生徒たちが見聞きして得た感動や刺激は、学びのモチベーションを飛躍的に高めたのではないでしょうか。

22年2月号 さぴあインタビュー/全国版:
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