受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

愛されている実感のなかで
高い知性と豊かな感性を養い
人と世界をつなぎ未来へと羽ばたく

横浜雙葉中学高等学校 校長 木下 庸子 先生

卒業しても生き続ける
在学中に聞いた先生のことば

聞き手1
サピックス
小学部教務本部
西川 敦

西川 学校目標の「人と世界、未来をつなぐ」についてお聞かせください。

木下 今の社会では「個」が大切にされています。自分を大切にするのはとても大事なことですが、それは他者という「個」も大切だということです。自分を大切にするのと同時に、自分がつながっている他者、そして他者とのつながりはとても大切です。マザー・マチルドは日本に来た当初、身寄りのない子どもたちを修道院に招き入れました。それも「つなぐ」ことでした。その子どもたちは家庭と断絶され、独りぼっちでした。その子どもたちを家庭へ、学びの道へ、そして人生へとつないでいったのです。

 学校目標を具体的に表すと、「たくましい知性」「開かれた感性」「未来への責任」の三つです。「たくましい知性」とは、知識だけに頼らず現実を直視し、目の前の課題にかかわり、自分の足で道を探る力です。これは本来の自分と出会い、自分のなかの可能性とつながる力でもあります。「開かれた感性」とは、他者が直面している現実を、他人事ではなく受け止めるための想像力と見通す力です。最後の「未来への責任」とは、未来とのつながりです。たとえば、今のわたしたちがゴミをたくさん出してしまうと、未来に影響します。自分たちの行動が未来につながっていることも、生徒たちには感じとってほしいと思っています。

神田 卒業生の方も「未来への責任」についてお話をしていらっしゃいますね。ホームページに、昨年11月の高1・2対象の特別授業で、卒業生の方が「フェアトレード」をテーマに講演されたことが出ていました。近年の中学入試でも出題校が増えているテーマですが、先進国が発展途上国の産物を安く買いたたくことなく、対等な立場、正当な価格で取引することをいいます。しかし、この講演では、「あらゆる場面で対等であろうとすること、そしてすべての人がつながっているのだと意識することこそがフェアトレードの精神であり、まさにエシカル(倫理)の始まりなのだ」と、より深くSDGsにつながるお話をされていました。実にすばらしいですね。先生方が日々話されていることが、生徒のなかで自然に育っていると感じます。

木下 そういう卒業生がいることをうれしく思います。わたしたちが教えるのは小さなことかもしれませんが、それをベースに、違う形で世の中に伝えてくれています。生徒たちは教師を踏み台にして羽ばたいてくれています。

西川 卒業生が話してくださることで、在校生も刺激を受けますよね。

木下 NGOで活動していたり、海外の大学で教えていたり、ロールモデルとなってくれる卒業生がたくさんいるので、頻繁に来て話をしてくれます。卒業生たちもいつも学園の一員であり、仲間であるという意識が強いようです。

22年8月号 さぴあインタビュー/全国版:
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