さぴあインタビュー/全国版
本質を考える学びの日々が
不確実な未来に向かって
力強く生きる女性を育てる
大妻中学高等学校 校長 梶取 弘昌 先生
「出る杭は打たれる」なら
打たれても立ち向かう「出る杭」に
サピックス
教育情報センター所長
神田 正樹
神田 梶取先生は2019年3月まで武蔵高等学校中学校の校長を務めていらっしゃいました。長く男子校にかかわってこられた先生からすると、女子校はだいぶ雰囲気が違うかと思いますが、着任してどのような印象を持たれましたか。
梶取 前校長の成島由美先生にお話をいただいてから、何度か先生とお会いしましたが、男子校と女子校との違いはあまり感じませんでした。女子校ということで、初めは堅苦しい印象を持っていましたが、実際には武蔵に近い自由な校風を感じました。
神田 校訓の「恥を知れ」は、創立者の大妻コタカ先生が定めたのだと思っていましたが、コタカ先生と教職員、そして生徒たちが話し合って決まったそうですね。大正バブルの時代にあえて「恥を知れ」ということばをみんなで話し合って校訓として定めたのは、画期的なことだと思います。
梶取 「恥を知れ」はすばらしい校訓です。「自分の良心に対して恥じるような行いをしてはならない」という戒めのことばですが、わたしは「たしなみの心」と言い換えています。自立し、そして自律することによって、人に対する優しさや思いやりも持つことができます。男性優位の時代にあって、「こういうことが大事だよね」と生徒たちを交えて決めたこともすばらしいですし、話し合える雰囲気があったことが大事です。
今後も教員がすべてを決めるのではなく、生徒と一緒に決めていきたいと思っています。校長室もふだんから開放しているので、生徒がよく来ます。「校則を変えてください」なんて言ってくるので、「じゃあ、みんなで考えてみよう」と答えています。仮に変えるべき校則があったとしても、生徒たちに考えさせることが大事なのです。校則はなぜあるのか。そこから、法律はなぜあるのか、憲法とは何なのか、という議論にまで持っていきたいですね。どこを変えるかではなく、「なぜこれができたのだろうか」と考えることで、時代にそぐわないもの、あるいは現代でも必要なものがわかってきます。学校としては規則があったほうが楽ですが、生徒自身が一つひとつ考えるようにしなくてはなりません。会議でも「前例にのっとって」という考えが、わたしはいちばん嫌いです。「前例はこうだからこうしましょう」というのは思考放棄です。
それから、成島先生がおっしゃったことばに「出る杭になれ」というものがあります。これもとても大事です。本校の生徒はみんな素直で良い子たちなのですが、これからの時代はそれだけでは通用しません。不確実性の時代のなかで子どもたちは社会に出なくてはならないため、「出る杭」になって、「打たれても立ち向かえる人」になってほしいと思います。打たれたらうまくかわすのではなく、そこでけんかができるくらいの元気が必要であり、それは男子でも女子でも同じです。もはや、いわゆる一流大学、一流企業に入れば安心という時代ではありません。一人ひとりがきちんと自分の目標を持っていなくてはならないのです。
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