受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

本質を考える学びの日々が
不確実な未来に向かって
力強く生きる女性を育てる

大妻中学高等学校 校長 梶取 弘昌 先生

日本語をまったく使えない環境で
語学力をしっかり鍛える海外研修

キャプションあり
上/校舎1階のエントランスホールには創立者・大妻コタカの胸像を設置
下/和室は、茶道部・日本舞踊部・筝曲部などの活動の場。中2の茶道(表千家)の授業もここで行われます

野口 グローバル教育も充実していますが、海外研修についてはどのようにお考えですか。

梶取 さまざまな制度がありますが、ただ海外に行けばいいというものではありません。本校の場合、多くのプログラムにホームステイを組み込んでいます。日本語を使えない環境に身を置き、語学力をしっかり鍛えるという方針だからです。もちろん、最初は思うように会話ができませんから、めげることもあるでしょう。「来るんじゃなかった」と思うかもしれません。それが、日がたつうちに「もっといたい」という気持ちに変わっていきます。そういう経験をすると、どの国に行っても、もう怖くないと思います。そういう力を育てるような研修制度にしたいですね。

野口 いきなり海外に行って「伝わらない」「どうしよう」という状況のなかで、ホストファミリーに何とかして意思を伝えようとする、あるいは相手が言いたいことを何とかして理解する。それを日々続けているうちに、互いの気持ちがわかるようになる。これは何にも代え難い経験ですね。

梶取 ただ、ホームステイ先を見つけるのは大変です。一定数の受け入れ先が必要ですし、家庭によって当たり外れもあります。でも、これはいいことだと思っています。食事をきちんと用意してくれない家庭だったとしたら、その家の子と一緒に自分で作ればいいのです。世界にはいろいろな家庭、いろいろな考えがあって、それを肌で知ること自体が学習なのです。

 海外に行くなら、早い時期のほうがいいと思っています。本校では高1の3学期にオーストラリアで学ぶ留学がありますが、帰国後はそのまま高2に進級します。学内にこもらず、どんどん学外に出て経験を積んでほしいですね。

 それから、ゆくゆくは英語圏だけでなく、フランス語圏やドイツ語圏など、いろいろな国の学校と提携して、交流を広げたいと思っています。日本はどうしても英語圏の国々との交流が中心になりがちですが、さまざまな国の文化に触れてほしいと思います。わたしの専門である音楽を例にとると、ベートーベンはドイツ語で思考していますし、ドビュッシーはフランス語で思考します。ドビュッシーの器楽曲を聴くと、フランスに育っているからああいう曲ができるのだとわかります。そういう意味でも語学を学ぶことは重要です。語学は「心を表す窓」です。窓はたくさんあったほうがいいですし、大きいほうがいいですよね。ですから理想をいえば、英語のほかにもう1か国語ができるといいですね。

22年10月号 さぴあインタビュー/全国版:
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