受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

「自主自律」の精神の下、
心動かす体験学習を通して
未来を強く生きる力を育てる

鎌倉学園中学校・高等学校 校長 松下 伸広 先生

中学時代の体験学習の感動が
将来の目的を見いだすきっかけに

先生写真
校長 松下 伸広 先生

中野 教育活動のなかで、建長寺とのつながりはあるのでしょうか。

松下 建長寺で行われる大事な宗教行事に参加することはあります。そのほか、中1から高1までが年に数回、建長寺での坐禅教室に参加します。また、家庭科の授業では、建長寺が発祥となっている「けんちん汁」の作り方を教わって料理する機会もあります。

神田 教育理念や校訓をことばや理屈で説明しても、中高生はすぐには理解できないと思います。でも「無の境地」とはいえないまでも、座禅を通して静かに自分の心と向き合うことで何か実感できるものがあるのでしょうね。

松下 おっしゃるとおりです。無の境地には簡単になれるものではありません。生徒たちは「早く終わらないかな」なんて思っていますが、建長寺の和尚はこうおっしゃいます。「今の君たちには悩みがないかもしれない。でも社会に出たときに必ず壁や迷いにぶつかる。そのときは自分の心を見つめることが大事なのだ」と。迷ったら自分がどこにいるかもわかりません。ですから「まず自分を見つける方法として座禅を組みなさい」というわけです。人間の五感はふだん外に向いていますが、何か迷ったときは意識を内側に向けることが大事です。座って呼吸を数えていくとすーっと心が落ち着きます。すると自分が何について悩んでいるかもわかってきて、解決方法も自然に見つかります。問題が起こったときにはすでに解答は出ているのです。そんなお話をしてくださって、わたしもなるほどと思いました。

中野 松下先生はどのような経緯で学園とかかわることになったのですか。

キャプションあり
上/さまざまなガイダンスや講習・補習でも使用される星月ホール(講堂)。425席あり、学年集会も開ける広さです
下/約50台のパソコンが並ぶCAI教室。昼休みや放課後は生徒に開放されています

松下 わたしは小田原の出身で、大学卒業後、教授に本校を紹介していただいて参りました。教職に就いて、もう45年になります。

神田 長く学園を見てこられて、隅から隅まで知り尽くしていらっしゃるのですね。

松下 まだまだわからないことはありますが、子どもたちと楽しく過ごしてきて、あっという間に45年がたちました。卒業生たちは、社会のさまざまな分野で活躍していて、そういう情報を聞くたびにうれしく思っています。卒業後も、本校をよく訪ねてきてくれます。昨年の学園祭のときも、ある卒業生がふらっとやってきて、近況を話してくれました。中学時代はわたしたちの手を焼かせるような生徒でしたが、今は大学で土木の勉強をしているとのことでした。本校では、中3の研修旅行でベトナムとカンボジアに行きます。彼はベトナムでいろいろな人と交流して心が開かれたこともあってか、その後にカンボジアでアンコールワットの史跡を見て、人間にはこんなにすばらしいものが造れるのだと感動したそうです。その経験から「土木の道に進み、将来はその仕事で日本の社会に貢献したい」と思ったというのです。しっかり目的を持ってがんばっていると思うとうれしいですね。何がきっかけになるかわからないので、できるだけ生徒の興味を引き起こすようなものを見せたり、体験させたりしたいと考えています。

23年6月号 さぴあインタビュー/全国版:
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