受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

伝統ある人格教育を柱に
学び合い、高め合いながら
自分らしく誇りある生き方をめざす

日本女子大学附属中学校・高等学校 校長 野中 友規子 先生

中学生であっても、ふだんから
自分の考えを持つことが大切

キャプションあり
上下/図書室の蔵書数は約5万冊。図書委員が朝、昼休み、放課後に貸し出しや返却の作業を担当しています

神田 英語の授業では、クラスを半分に分けて世界の名作を読んだり、SDGsをテーマにして英語でディスカッションしたりしていると伺いました。そうした質の高い英語教育の成果だと思いますが、TOEFL®のプライマリーテストでゴールドレベルを受賞された生徒がいるそうですね。ゴールドレベルは世界の中高生英語学習者のなかで上位7%に入らないともらえません。すばらしいことです。

野中 本校はTOEFL Primary®、TOEFL Junior®の団体実施認可会場となっていますが、毎年ゴールドレベルの生徒を出しています。だからといって、それらの生徒たちすべてが帰国生であるとか、小学校のころから英語を習っているというわけではありません。

 今年2月に行われた東京大学E.S.S.杯争奪英語弁論大会では、本校の中3生が優勝しました。年齢・国籍不問の英語スピーチ大会で、予選審査を通過した本選出場者10名のほとんどが大学生でした。優勝した生徒は差別についてスピーチしました。小学4年生までアメリカに住んでいて、肌の色や髪の色などで差別された経験があったので、そのことを話しました。スピーチが終わると、審査員の方が英語でスピーチの内容について違う角度から質問をします。彼女は「LGBTについてどう思うか」「日本は戦時中フィリピンに侵略したが、フィリピン人の友だちがいるとしたら、そのことをどう説明するか」という質問を受けました。LGBTに関しては、「世の中にはさまざまな差別があって、肌の色など外見で差別することもあるけれど、その人が大事にしてきた心のなかのことで差別をするのも許しがたいことだ」と答えていました。LGBTについてストレートに考えを述べるのではなく、考え方の違う人に対してどう向き合うかという形で答えたのです。ふだんからそういうことを考えていないとできないと思います。フィリピン侵略については、彼女があずかり知らない歴史上の出来事ではありますが、「過去にやったことは消せないことだけど、お互いに2023年を生きている人間同士として相手とかかわっていきたい」という答え方をしていました。どんな質問が出るかわからないやり取りのところで、自分の考えをはっきり述べたのは見事だなと感心しました。

神田 心のなかのことで差別をするのは、言い換えれば人間性を否定するということです。同じ人間でありながら他者の人間性を否定するのは許されざることです。そうした思いが常に彼女のなかにあったからこそ答えられたのですね。

安酸 総合的な学習の時間(総合学習)では、1年生は「ようこそ先輩」という、卒業生との触れ合いのプログラムがありますね。これはどのような内容ですか。

野中 現役の大学生を招いて話を聞くもので、始めてからもう24年になります。1年生ですから進路の話というより、友だち関係とかクラブ活動と勉強の両立など、中高生活に関して聞くことが多いです。卒業生たちは「この授業はこういう意味があるのよ」なんていうことも教えてくれますから、苦手意識を持っていた授業でも「がんばってみようかな」という気持ちになるようです。

神田 2年生の総合学習のメニューを見ると、国際理解教育として「アフガニスタンの支援」とあります。これは日本女子大学が創立百周年のときに始めたアフガニスタン女性教育支援プログラムと関係があるのですか。

野中 そうですね。ただ、10年ほど前まではアフガニスタンの留学生を招へいしていましたが、国の事情で連絡がつかず途絶えています。今は静岡にいるアフガニスタン人の医師が毎年いらして、講演をしてくださいます。

23年7月号 さぴあインタビュー/全国版:
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