受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

独自の教育で体験する
学びを深める楽しさが
みずから道を切り開く力に

逗子開成中学校・高等学校 校長 小和田 亜土 先生

一人ひとりの状況に合わせて
必要な学びを個別にサポート

先生写真
校長 小和田 亜土 先生

神田 小和田先生はこの春に校長に就任されました。これまでどのように学園にかかわってこられたのでしょうか。

小和田 わたしが本校の教員になったのは、今から30年前の1993(平成5)年です。大学時代は教育学を専攻し、教育思想や教育哲学を専門としてきたので、高校では主に世界史や倫理を教え、中学では社会科全般を担当してきました。

神田 6年間の一貫教育のなかで、学習面では授業と家庭学習の両輪で基礎学力を固め、学び続ける力を養うことを重視されていますね。授業で大切にされているのは、どのようなことですか。

小和田 中学受験のときは、みんなが志望校への合格という目標に向けて勉強していたと思いますが、中学に入ったら、自分がおもしろいと思うことを追究していく。それが中学・高校での学習の基本であるというところに立ち返ってほしいですね。「学ぶことは楽しい」という意識を持って日々の学習に臨めば、将来の希望や目標が生まれてくると思います。そうして自分で将来の道を選択できるようになってほしいですね。

 そのため、授業も楽しくやることが基本です。もちろん、必要な知識はしっかり身につけなくてはならないので、家庭学習も大切です。中学の最初の段階は特にそうです。そこから徐々に自己管理して、学習を進められるようになっていかなければなりません。徳間先生が掲げた「日本一の学校にする」という意味では、一人ひとりが希望する大学に進学することが理想です。東大の入試でもそうですが、難関の国公立大学に合格するには自分の考えをきちんと論述できる力が問われます。授業を通じて、文章を論理的に読み解く力や、自分で考えたことを表現する力をきちんと育てなくてはなりません。

小河原 貴校の入試問題を拝見しても、その教育方針が表れているように思います。社会科においては必ず記述問題を出題されていますが、知っていることをただ書かせるのではなく、提示した資料からわかることを知識と組み合わせて考えて書かせる問題になっています。

神田 家庭学習に関しては「学習の手引き」というオリジナルの手帳を使って、自学自習の習慣をつけるようにしているそうですね。

小和田 「学習の手引き」を導入したのは10年ほど前です。それ以来、日々の学習の計画や達成度を書かせるようにしています。この手帳は自己管理能力を身につけることを目標に取り入れたのですが、男の子ということもあってか、当初は書くべきところが空欄のままになっていたり、持ってくるのを忘れてしまったりといったことが目立ちました。そこで、家で書かせて提出させるのではなく、朝のホームルームの時間にみんなで一緒に手帳を開いて、宿題の提出日、小テストの実施日、それぞれのクラブ活動日などを書き入れ、それを帰りのホームルームのときに確認しながら、「小テストの勉強はいつしたらいいのか」などを考えて書き入れるというスタイルに変えました。これなら、わからないことがあればその場で確認できます。

キャプションあり
上/映画・音楽・演劇の鑑賞会や講演会などが行われる徳間記念ホール。340席あり、一般の劇場と同等の設備が整っています
下/25メートル×8コースある屋外の温水プール。ここを活動拠点とする水泳部は強豪として知られています

神田 そのほうが取り組みやすいと思います。続けていけば自学自習の習慣も身についていきますね。先生方は大変かもしれませんが、非常にていねいな指導だと思います。

小河原 補習や講習はどのような形で実施しているのでしょうか。

小和田 どの学年も、定期テスト終了後の1週間ほどを補習期間に充てています。ただ、近年は機械的に補習・講習を行うのは控えています。以前は、必要だと思えば担当者がどんどん補習を入れていたのですが、テストで点数が取れない原因は生徒によって異なります。授業を聞いていなかったからできなかった生徒もいれば、授業では理解できていても、テスト前に知識を定着させる勉強を怠った結果、点数が取れなかったという生徒もいます。そうした生徒を一つの教室に集め、授業の焼き直しのような補習をやってもあまり意味がありません。そこで、勉強会のようにスリム化しました。生徒には個別に残ってもらい、テスト結果が悪かった分野を自分で勉強して、わからないところがあったら教員に聞くという形です。加えて、一定レベルに達している生徒には難度を上げた問題を配信し、その解答を添削して返すというサポートも取り入れています。

 高2・3は自分で問題集を解いて朝に提出すれば、帰りのホームルームまでに教員が見て返すようにしています。そうすれば彼らはそれを持って自習室で復習ができますし、新しい問題に取り組んで翌朝また提出するという流れで学習が進められます。教科によっては「添削講座」と呼んでいます。

小河原 スリム化したとおっしゃいましたが、むしろ手厚くなったように思えます。

小和田 そういう形で勉強するなかで、成績が上がっていく生徒は増えています。やはり受験前になると、生徒は自分の補いたいところ、伸ばしたいところがはっきりしてくるので、教員が個別に対応したほうが効率的です。学校で使う問題集でなくても対応しますから、どんどん頼ってほしいと思っています。

小河原 ここ数年の大学合格実績を拝見すると、医学部医学科にしてもさまざまな大学に合格されていますし、海外大学の進学先も幅広くなっているように思います。一人ひとり違う学習課題や希望進路に応える土壌が学校にあって、それがうまく回っているのですね。

23年9月号 さぴあインタビュー/全国版:
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