受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

独自の教育で体験する
学びを深める楽しさが
みずから道を切り開く力に

逗子開成中学校・高等学校 校長 小和田 亜土 先生

学びを深める楽しさから生まれた
自主的な探究プロジェクト

小和田 初めて中3生が東大の大学院の先生に講義をしていただいたときの内容は、海洋物理学の海洋深層循環についてでした。大人が聞いても難しい内容でしたが、講義が終わってから「何か質問がある人」と聞くと、50人ぐらいが手を挙げ、先生は一人ひとりの質問にていねいに答えてくださり、予定していた2時間を過ぎてしまいました。それでも先生は、「大学院生では想像がつかないような素朴な質問がどんどん出てきて、非常におもしろい」と言ってくださいました。そして、研究室に定期的に遊びに来ないかとお誘いをいただき、20人ほどの希望者が東大の研究室に伺いました。そこで宿題を一つ出されました。実は、高校の教科書にも海洋深層循環の実験例が出ているのですが、先生は「それよりも簡単で、いいやり方があるはずなんだけど、君たちチャレンジしてみないか」とおっしゃったのです。「高校の教科書の内容を超えるような実験装置を開発してみようよ」と。もちろん、生徒たちはのめり込みました。クラブではなく、サークルのような状態で、生徒有志による活動が今でも続いています。

キャプションあり
上/徳間記念ホールの地下に設置された展示室。逗子開成の歴史を紹介する貴重な資料や写真が並んでいます
下/海洋教育センターの地下にあるヨット工作室。1階には二つの講義室があり、2階は88名が宿泊できる施設になっています

神田 それが「先端的海洋教育・高校生プロジェクト」ですね。

小和田 そうです。組織名が長すぎるので、わたしたちは「うみけん」と呼んでいます。

神田 その「うみけん」の方々は、毎年、東大の海洋教育センターと日本財団が共催している海洋教育サミットで発表したり、海洋研究に関する賞を獲得したりと、全国レベルで活躍していると伺いました。しっかり成果を出しているのですね。

小和田 やりたいことを深めていくおもしろさを感じて、それが社会的に評価されるようなことを、中高時代にどんどん経験してもらいたいと思っています。

小河原 国際交流も盛んで、まず中3全員が参加する海外研修にニュージーランド研修があります。7日間の日程で、ホームステイやファームステイも体験するのですね。

小和田 ニュージーランド研修は2005年から実施しています。ランギトトカレッジというオークランドの中高一貫校と姉妹校提携を結んで以来、交流を続けています。この研修は、授業で学んだ英語が海外で通用するかどうかを試す絶好の機会になると同時に、多文化社会を学ぶ良い経験にもなります。ここ数年はコロナ禍で実施できませんでしたが、今年度は3月に中3生を派遣する方向で準備を進めています。

神田 高校ではアジア研究旅行が全員参加で行われますね。

小和田 アジア研究旅行は、韓国、マレーシア、ベトナム、オーストラリア、沖縄の5か所から選択して出掛ける6日間の研究旅行です。ホームステイや現地校との交流を通して、同じ英語を学ぶアジアの学生たちと触れ合うことによって、互いに磨き合うきっかけになっています。

23年9月号 さぴあインタビュー/全国版:
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