受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/関西情報

イエズス会のリーダー教育で、
世界の課題を解決する
有為な人間を育成

六甲学院中学校・高等学校 校長 髙橋 純雄 先生

社会奉仕活動を通じて
「仕えるリーダー」を育てる

先生写真
校長 髙橋 純雄 先生

立見 イエズス会の学校の基本的な教育方針はどのようなものでしょうか。

髙橋 共通のビジョンがあり、それは「優れた知性と人格を兼ね備える」という人間的卓越性を追究する全人教育を行うことです。イエズス会は、伝統的には知性の教育を大切にし、国の中枢や経済界で活躍するリーダーを輩出する学校づくりを多くの国で行ってきましたが、1970年代からは、「他者のために、他者とともに生きる人間 ~Men for Others, with Others」という標語の下、新しい観点で学校づくりをしていこうという取り組みを始めました。この標語を唱えたペドロ・アルペ神父(1907~1991年)は日本で長く宣教し、その後、イエズス会の総長を務めた人物です。医学も修得していた彼は第二次世界大戦中に、原爆が投下された直後の広島に足を運び、多くの被災者の救護に当たりました。みずからも「他者のために、他者とともに」という生き方を実践したのです。そんな彼の行動を手本とし、全世界のイエズス会の学校が社会奉仕活動を始めました。

 本校では、生徒たちで委員会を設け、インドにあるハンセン病療養施設への募金を1979年から続けています。すでに45年近くも続いている活動ですが、1985年には生徒と教員が初めて現地を訪問し、その後も2~3年に一度、25名ほどの希望者がインドを訪問しています。コロナ禍でしばらく実施できずにいましたが、2024年から再開する予定です。このインド募金とインド訪問は、本校にとっての大きな社会奉仕活動であり、社会から差別を受け、抑圧されて生活している人々が苦しみから解放され、幸せに暮らせる社会の実現に向けて何か具体的に行動しようという趣旨です。

 本校では毎年、生徒全員が地域のための社会奉仕活動に参加しています。中1・2は赤い羽根の共同募金を行い、中3から高2までは、近隣の社会福祉関連施設で手伝いなどをしています。そうしたボランティア活動は、有志を募って行うのではなく、全員が体験すべきこととして行うのが本校の特徴です。そうした精神が、この40年間で自然と根付いたので、イエズス会の学校のある東ティモールでコロナ禍に洪水が起きた際も、本校の生徒と卒業生が自主的に募金を集め、姉妹校と被害の甚大な山村に送るなど、実際に現地のために役立つ活動ができています。さらに、そうしたボランティア活動をするなかで、困っている人々を助けるために今、何ができるかと常に考える意識も育っています。

立見 貴校が育てるリーダー像については「仕えるリーダー」という表現もしていますね。

髙橋 はい。これも広い意味では「他者のために、他者とともに」と同じ意味です。リーダーとして活躍するなかでも、社会のなかにいる弱い立場の人も含めて幸せになれる社会をつくっていくことを使命としている人を、「仕えるリーダー」と表現しています。

24年1月号 さぴあインタビュー/関西情報:
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