受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/関西情報

イエズス会のリーダー教育で、
世界の課題を解決する
有為な人間を育成

六甲学院中学校・高等学校 校長 髙橋 純雄 先生

イエズス会のネットワークを
生かした海外研修も豊富

聞き手2
サピックス小学部
住吉校校舎責任者
中川 智史

中川 世界中に広がっているイエズス会のネットワークは、貴校の教育にどのように生かされているのでしょうか。

髙橋 イエズス会が創設した学校は現在、大学を含め世界中に890校ほどあります。そうした学校とは、オンラインを含め盛んに交流しています。コロナ禍では、どの国の生徒も大変な思いをし、時には命の危機もありましたが、そういう状況をどう乗り越えていこうかと考えつつ暮らしてきたという共通体験があります。それをネットワークのつながりのなかで分かち合えたことで、命の大切さや世界が協力して取り組まなければならないことを共有できたのは、とても貴重な体験だったと思います。

 新型コロナも落ち着き、海外に行けるようになりました。これからは、現地に出向いて、海外の中学生・高校生・大学生と交流することを大事にしたいですね。そこで、新しい取り組みとしては、高2生全員が参加する研修旅行の訪問先を、シンガポールとマレーシアに変更しました。現地では、シンガポール国立大学の学生たちによるSDGsをテーマとしたプレゼンテーションを見せてもらいます。そして、それを踏まえて、自分たちは持続可能な社会を実現するためにどういう取り組みをしたらいいのかをグループで考え、英語でプレゼンテーションをします。そうした活動をする一方で、民族・宗教が同じ人々が集まって生活しているさまざまなエリアや、政府の取り組みとして民族・宗教の異なる人々が協力しながら生活している団地などを見学するというプログラムもあります。マレーシアでは、国立の中高一貫校に行って現地生徒と交流するほか、農村部の家庭を訪問し、一緒に食事や現地のゲームをします。最近は、宗教や民族の違いによる対立・紛争が深刻ですが、多くがイスラム教徒であるマレーシアの人々と有意義な時間を持ち、壁は越えられるのだと実感する経験ができたことは、とても良かったと思っています。

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この日は雨だったため、ゆとりある校内のスペースを使用し、競歩大会へ向けての練習が行われていました
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校舎中央にある職員室は通路に面しているため、気軽に立ち寄ることができます

 そのほかに、2023年から20名ほどの希望者を対象とするカンボジア研修も始めました。カンボジアのこれまでの歴史を振り返りながら、発展しつつある都市部だけでなく、ごみの山から使える資源を拾って生活している人がいる郊外の町の様子などを見たうえで、困窮者の支援をしているNGO職員から話を聞きます。そのなかには、本校が1985年に実施した1回目のインド訪問に参加した卒業生がいます。彼は京都大学の法学部を卒業し、1993年からカンボジアで、公正な選挙を実施するための活動をした後、そのNGOの一員としても働き、長い間法律の専門家としてカンボジアの法律作成にかかわっています。本校では、海外で困窮している人々の姿を見る機会が多くあるので、彼のように国内外で国際貢献のために尽くす卒業生が少なからずいるのです。

 そのように、海外で活躍している卒業生とのつながりを大切にし、彼らに協力してもらうと良い企画になることに気づいたのは、10年ほど前にスタートしたニューヨーク研修のときです。ニューヨークでは華やかなマンハッタンを見るだけではなく、貧しい人たちが多く生活する、市の最北端のブロンクスにあるフォーダム高校とも交流をしています。同校はとても良い教育をしており、たとえば、宗教担当の先生は、「宗教による差別・偏見に基づく排除はとても危険なことなので、他宗教でも公平・公正に見ていかなければならない」という方針の下、イスラム教の教えや特徴についても教えていました。また、貧しい人々のための社会福祉施設で奉仕活動を行うなど、本校と似ている部分があるので、つながりを持ちたいと考えたのが、交流を始めたきっかけです。さらに、ニューヨークでは本校の卒業生もビジネスマンや研究者として働いているので、彼らの職場を訪問し、どんな思いで仕事をしているのかを知ることも、生徒が進路を決めるうえで役立つだろうと考えました。前述のシンガポール・マレーシア研修でも、シンガポールで働く本校の卒業生の職場を訪ね、話を聞く機会を設けています。このように、本校ではここ数年、卒業生に生き方を含めた自身の紹介をしてもらい、それを在校生が進路を考えるうえで役立ててもらうという取り組みを大事にしています。

24年1月号 さぴあインタビュー/関西情報:
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