受験ライフをサポートする進学情報誌 さぴあ

2026年度中学入試 親子で歩んだ 受験の軌跡

進学校 麻布中学校

執念で掴み取った逆転合格

 「やっぱり麻布に行きたい」。親である私は、その宣言を聞いた瞬間、戸惑いを隠せませんでした。通学距離、自由と責任の校風、そしてなにより当時の息子の偏差値。冷静に考えれば、無謀とも思える高い目標だったからです。それまでSAPIXの上位クラスに在籍した経験もなく、私たちにとって麻布はまさに「高嶺の花」でした。しかし、息子の瞳には「絶対に頑張るから!」という、かつてない強い意志が宿っていました。

 転機となったのは、志望校判定サピックスオープンでした。算数以外の思考・記述型(Bタイプ)で、息子は意外な適性を見せたのです。塾の先生からも「麻布を目指せるポテンシャルがある」と背中を押され、私はついに覚悟を決めました。どんなことがあっても息子が信じた道を、全力で支え抜こうと。

 それからは、親子二人三脚での泥臭い努力の日々が始まりました。基礎トレや漢字、理科のコアプラスといった基礎学習を習慣化させるため、私は日々のスケジュール管理に徹しました。6年生の夏休みは塾の指導を信じ抜き、わき目も振らずに膨大な課題をこなしていきました。

 しかし、秋以降に立ちはだかったのは「算数の壁」でした。過去問ではどの学校の合格点にも届かず、息子は自信を失いかけました。ところが、麻布の過去問だけは別でした。わずか算数9点という惨憺たる結果の日でも、彼は「麻布の問題は解いていて楽しい!」と目を輝かせるのです。麻布中学の独創的で知的な深い教育に触れるうち、親子でこの学校に心底惚れ込んでいきました。

 SS特訓では周囲のレベルに圧倒され、泣きながら帰宅する夜もありました。もはや親の手に負えなくなった麻布特有の記述難問を教えることはできません。私にできるのは、折れそうな息子のメンタルを支え、麻布の対策プリントを整理して見返せるように整えることだけでした。12月の合格力判定SOは50%。不安に押しつぶされそうになりながらも、先生の「4科目合計で合格点を目指せばいい」という言葉を糧に、最後まで走り抜けました。

 2月1日、入試本番。カイロとチョコに激励メッセージを添え、震える背中を送り出しました。手応えはあったものの、3日の合格発表、パソコンの画面に息子の番号はありませんでした。親子で一晩中泣き明かし、失意のまま迎えた翌日の午後1時半。一本の電話が鳴りました。 「麻布中学校です。繰り上げ合格の連絡を差し上げました」。

 耳を疑うその知らせに、今度は溢れるほどの嬉し泣きで抱き合いました。「最後の1秒まで1点でも多く取る気持ちを持つことが大切だ」という先生の言葉が、今なら痛いほどわかります。最後まで諦めず、泥臭く、走り抜けた息子を、私は心から誇りに思います。この「1点の重み」を一生の宝物として胸に刻み、息子は憧れ続けたあの門をくぐります。