受験ライフをサポートする進学情報誌 さぴあ

2026年度中学入試 親子で歩んだ 受験の軌跡

進学校 開成中学校

六年間のとなりで

 息子が塾に通い始めたのは小学一年生のときでした。中学受験を強く意識していたわけではなく、共働きで放課後を安心して過ごせる場所を探していたことがきっかけでした。一年生をしっかり見てくれる環境がなかなか見つからず、悩んだ末に通い始めたのがサピックスでした。

 ところが、通い始めてみると息子の様子は予想とは違いました。授業が楽しくて仕方がない様子で、塾はいつの間にか本人にとって大切な居場所になっていました。親の都合で始めた通塾でしたが、そのまま六年間通い続けることになりました。

 六年生になり、受験が近づくにつれて、私は学力以上にメンタル面を意識するようになりました。ある日、息子にこう伝えました。

 「勉強を頑張るのはあなたの責任。でも、受験の結果はママの責任にしよう」

 息子は「ふーん」と聞いている様子で、私はそれほど深く受け止めていないだろうと思っていました。ところが後日、何気ない会話の中で「どの学校に行きたい? もし行けなかったらどう思う?」と聞くと、息子はこう答えました。

 「え? 受験の結果はママの責任なんじゃないの?」

 その瞬間、はっとしました。あのときの言葉は、ちゃんと息子の心に届いていたのです。そして同時に、親の言葉は、親が思っている以上に重く、深く、子どもの中に残るのだと気づかされました。

 志望校を具体的に考える時期になりました。息子は当初から「灘を受けてみたい」と言っていました。ただ、その思いがどこまで本気なのか、親としては迷いもあり、安全校から受験するという一般的な考え方も頭をよぎりました。

 何度確認しても気持ちは変わりませんでした。「もし思うような結果でなかったらどうする?」と聞くと、「そのときは神戸に小旅行しようよ」と答えました。その言葉に、結果だけでなく挑戦そのものを受け止める姿勢を感じ、胸が少し軽くなりました。

 最終的に担当の先生とも相談し、灘を受験する決意を固めました。結果はありがたいものでしたが、今振り返って強く思うのは、受験は結果だけのものではないということです。

 もちろん合否は大切です。しかしそれ以上に、目標に向かって努力した時間、親子で何度も話し合った夜、迷いながらも自分で決めた経験―それらすべてが、息子の中に残る財産なのではないかと思います。

 六年間の塾通いは、学力を伸ばす時間であると同時に、親の私自身が学ぶ時間でもありました。

 この経験を通して息子は、自分で目標を決め、迷いながらも選択し、最後までやり抜く力を身につけました。それは合否以上に、これからの人生を支える大切な土台になっていくのだと思います。受験は一つの通過点に過ぎませんが、この挑戦で得た自信と経験は、これから始まる新しい学校生活、そしてその先へと確実につながっていくはずです。