受験ライフをサポートする進学情報誌 さぴあ

2026年度中学入試 親子で歩んだ 受験の軌跡

進学校 開成中学校

恐るべき蕎麦屋

 「はいドンドン、はいジャンジャン」、いよいよ受験学年となる1年前の2月、我が家は盛岡に旅行に行きました。息子のたっての希望のわんこそばです。息子は大した数を食べられなかったように記憶していますが、周囲の観光客と思われる外国人がこれでもかと椀を積み上げていたのを覚えています。

 思えば、親にとってこの受験はサピックスのゆでる大量の蕎麦を親がちいさな椀に盛り、それをひたすら食べさせる、といったようなものだったように感じます。ひたすら食べた先に合格があるのか、人間としての成長があるのかは食べている間はよくわかりません。

 サピックスの蕎麦は栄養満点です。しかもおいしいようです。毎回「今日もおいしかった!」と帰ってきます。ただ、息子の乏しい語彙力により、その味の秘訣を母に知る術はありませんでした。毎回大量のお持ち帰りがありますが、小食の息子は量を前にひるんでしまいます。母の仕事は朝夕と小分けにして少しずつ食べる習慣をつけること、時には薬味を混ぜたり、温めたり冷やしたりして、家でも食べさせることです。中には食べなくてもよい蕎麦も入っています。息子は食べなくてよいものの印だけはしっかりとつけてきて、頑なに食べようとはしません。必要十分な栄養はとれると信じて、無理強いはしませんでした。

 食べ続け、消化するためには適度な息抜きも睡眠も必要でした。息子の消化器官は長めのようです。睡眠、ゲーム、YouTube、公園、漫画…周りを見ると、みな椀を積み上げています。親としての焦りは募ります。

 蕎麦の量は後期にはSS、過去問と大量になります。当初は食べすぎで吐きそうになり消化不良を起こしていた息子ですが、正月特訓を迎えるころには「SS激うま!」と楽しみに通っていました。恐るべき蕎麦屋です。店主の切り盛りが素晴らしいのはもちろん、仲間と食べるとうまみは倍増するようです。このころにはようやく苦手な国語味も理科の暗記味も飲み込めるようになっていました。

 いよいよ入試が始まります。もう血肉になっていると信じて入試を受けるだけです。たとえ合格をもらえなくても、つけてきた栄養は息子の生涯の糧になっているはずです。ここまで、コツコツと、嫌いな味でも食べ続けてきた息子を誇りに思おう、と決めました。

 入試当日、「おいしく食べておいで」という気持ちで送り出した息子は一周りも二周りも大きくなっていたように見えました。

 栄養満点の蕎麦を作ってくれたサピックス、楽しく食べさせてくれた名店主(先生達)、ともに通った常連さん達に心から感謝したいと思います。ありがとうございました。